編集者という職業をドラクエやファイナルファンタジーみたいなRPG的に例えてみると

いろんな仕事をしていると、若手の編集者の方からこんなことを聞かれることがあります。

「編集ってどんな仕事なんでしょうか?」

「おいおい、君も編集者だろう…」と心の中で思いつつ、確かに編集者というのは、自分がその立場にいてもぼんやりわかりづらい仕事かもしれないと思う自分もいます。

そもそも編集者と一言にいっても、雑誌編集者、書籍編集者、ウェブ編集者などに細分化してみると、役割がだいぶ違ってきます。

雑誌編集者は周りを動かしながら自分で記事を書くことがある一方、書籍編集者は新しい書き手を発掘したり、作家とのコミュニケーションが主な仕事になります。

ウェブ編集者になると、とにかく数を播くことが求められて、編集よりも「編成」に近い働き方の人が多いようにも見えます。



そんな中で、もし編集の仕事を一言で表すとしたら、「周りの人間を円滑に動かしながら、全体を丸く収まるように繋ぐ人」と私なら答えます。

編集者は企画の原動力になるエンジン

プロコンテンツの場合、ひとつの企画に大勢の人が関わります。例えば雑誌編集では、取材対象者、ライター、カメラマン、デザイナー、イラストレーター、校閲者、印刷会社など。ファッション誌系であれば、モデル、スタイリストなどもいますし、広告企画ならクライアントや代理店が関わってきます。そして内部ではもちろん編集長やデスクらとの調整も必要です。

これらの“部品”の中心でエンジンの役割を果たし、円滑な進行を担うのが編集者です。

「それって便利屋じゃん」って思う方もいるかもしれませんが、エンジンである編集者に火が点かないと全体が動かないのでただの便利屋ではありません。ディレクターよりも中身に深く介入するイメージですね(ディレクターにもいろいろあると思いますが…)。

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例えば、上から任された仕事で自分に知識も人脈もないなと思えば、休日を潰して実費でリサーチに行ったり、資料を読みあさったりする。

先入観が過ぎると「転職サイトの説明でも入社時の説明でもそんなこと書いてなかったよ」ってなるかもしれませんが、資料で説明できないようなイレギュラーが多い仕事だと思います。

編集者はロープレの主人公?

さて、そんな編集者の実力を測る時、僕は編集者をRPG(ロールプレイングゲーム)の主人公に似ていると思うことがあります。

編集の仕事をRPGの主人公風に表してみると…

例えば、HP(ヒットポイント)は、個人の実力を含めた編集者自身の体力。対してMP(マジックポイント)は、人を動かす中で様々なストレスに耐える気力とします。

そして、コマンドの「たたかう」は純粋な編集作業のこと。「ちから(編集IQ)」が高いほど良いアイデアが出せたり、効率の良い仕事ができる。

「まほう」は編集以外の能力のこと。例えば、自分で文章が書けるとか、写真や動画が撮れるとか、上司からの信頼とか、SNSのファン数とか、間接的に編集に関わってくる特殊能力のこと。

「しょうかん」は外部にある人脈のこと。簡単なところでは、ライターやカメラマンなどの外部スタッフになります。強いスタッフ(召喚獣)を持っていれば、自分が戦わなくても自ずとクオリティの高い仕事ができる。

ただし、たとえ強い召喚獣を持っていてもHP/MPが高くなければ、その実力を使いこなせないという、使う側と使われる側の相関性もあると思います。

「アイテム」は予算や資金力です。たとえHP/MPが低くても、使える魔法がなくても、良い召喚獣を持っていないとしても、ドーンとお金さえかければ何とかなる(はず笑)。


有能な編集者は「周りの人を不幸せにしない」


これ、紙関係もウェブ関係も問わず、編集者としてのバランスを考える上で参考になると思います。自分が書くことの多い専門誌編集の人はとにかく初めはHP/MPを上げることに力を入れるべきだし、文芸書編集の人は強い召喚獣を一匹持っているだけで安泰というケースもありえます。

そして、ウェブ編集などでとにかく短期で結果を出したい人は、「アイテム」をじゃんじゃん使ってお金の力で一気に駆け上がるのもひとつの手です。

ちなみに、今の僕は自分で企画から撮影・執筆までする仕事がメインなので、HP/MP強化集中型のスタンスになっていますね。

もちろん全部揃っているのが理想なんですけど、最初のうちから何もかもを得ようとするのは難しい。

ただ、どれかひとつ強みを持っていると周りとの差別化になりますし、どこに行っても「コイツは使える」と思ってもらえる編集者になれると思います。

最後に、一番初めに編集者とは「周りの人間を円滑に動かしながら、全体を丸く収まるように繋ぐ人」と書きましたが、全体を繋いでもつぎはぎばかりで、関わる人の誰かが貧しい思いをしていたら、それは有能な編集者とはいえません。「関わる人を不幸せにしない」というのが、能力とは別のところにある良い編集者の条件だと僕は思います。

それでは今日もがんばりましょう。

【about me…】

鈴木 翔

静岡県生まれ。東京都中央区在住。出版社や編プロに務めた後に独立。旅好きでこれまでに取材含めて40カ国以上に渡航歴あり。国際問題からサブカルまで幅広く守備範囲にしています。現在は雑誌、実用書などの紙媒体での編集・執筆だけでなく、WEBライターとしても様々な媒体に関わっています。ジャンルは、旅、交通、おでかけ、エンタメ、芸術、ビジネス、経済などノンジャンルでありオールジャンル。これまでの経験から「わかりにくいものでもわかりやすく」伝えることがモットーです。

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