メモの駄力

先日、ある企業団体が主催する新入社員セミナーを取材する機会があった。本来は4月に行われるはずのセミナーだったが、新型コロナの影響で延期されていた。

会員企業から集まった約40名の受講者のうち、一番下は高校を卒業したての18歳。3日かけて行われるプログラムの初日は、派遣関係の企業で教育部門に携わる女性を講師に招いて、社会人の心得について講義が行われた。

新入社員を対象にした講義とあって、最初は「社会人と学生の違い」「社会人としての必要な意識」など、基本中の基本といった内容。時折りグループワークを交えながら、講師が受講者に意見を求めることもあるが、多くが社会人一年生ゆえに答えも純真で若々しい。

そんな中、講師が話したことに一つだけひっかかる部分があった。「社会人には能動的な積極性が必要だ」みたいな話をしていた時に、講師が「パフォーマンスでいいから、話していることはとにかくメモに取りなさい」と言ったのだ。僕は、果たしてそうだろうか、それはミスリードになるんじゃないかと思った。

学生時代からメールの交流に馴れた僕たちから下の世代は、とにかく対面コミュニケーションが下手だと思う。メールとかSNSとか、今風にいえば“非接触の交流”に馴れていて、直接訊かれたことを即時に返すのが得意ではない。言い換えれば、自分の意見を瞬時にまとめて答える能力に欠けている。

「会議で意見を言わない奴は、その会議に出ていないのと同じだ」とは、かつての上司によく言われたことだが、クライアント関連の会議で急に意見を求められて“チ~ン”となっている若手を見ると、他人のことながら居た堪れない気分になる。自分の経験則で言えば、そういうのを打開するには、前のめりでもいいから相手の前に出て、自分を意見を言わなければいけない方向に仕向けることが必要だと思う。

そうした中で、何でもかんでもメモを取るという行為は周りとの壁を作る格好の手段。そして会議に介入することからの逃げになる。これは、パソコンを開いて初期者みたいにカチャカチャとキーボードを叩いている人も同じこと。

危ないのは、メモを取ることだけで仕事をした気になってしまうことだ。それは例えば、ちょっと前のベストセラーをもじって「メモの駄力」とでも言うべきだろうか。そういう人はメモ上には記憶が残っていても、頭の中には記憶が残っていないということが意外と多い。自分はやっているつもりでも、もしも相手がベテランのやり手ならば、「この人、メモ取るだけで何も考えてないんだろうな」と手にとるように見抜かれてしまう。

もちろん、まったくメモを取るなということではなく、ここで言いたいのはメモを取るのは要点だけでOKだということ。メモを取る時以外は相手の目を見て、話に積極的に加わることの方が好印象につながる。要は、頭の中のメモと紙のメモを要領よく使い分けるべき。記録だけなら、今であればスマホのレコーダーアプリや動画収録など、書き起こさなくても保管できる手段がいくつもある。それよりもその場のインタラクティブな会話に飛び込むことの方が人として価値が高い。逆を言えば、アイデアを出さないどころか口を開かないような人間は、その場にいる必要がないと僕は思う。

僕は16歳の時に初めてバイトを経験して働くことを覚えたが、内部的なルールをメモにとったことはゼロに近い。それより体で覚えて、わからないことはあとから誰かに聞けばいいというスタンスで来た。仕事を知っている人は周りにたくさんいるわけだし、失敗したほうが覚えが早いというのが自論だ。

また、インタビューというのは会議に比べると特殊な場かもしれないが、僕は編集担当としてインタビューに立ち会う際も、聞いた内容をそのままメモすることはまずない。それよりもライターが聞いてないことや付け加えて聞きたいことを書き留めている。そして咄嗟に話を振られた時に必ずすぐに何かを答えられるように備えている。とにかく自分も全体の中の当事者であるという姿勢を忘れないようにしている。

最後に、最近はオンライン会議の普及が著しい。スカイプとかズームとか、決して全部のツールを使いこなしているわけではないけれど、どのツールで会議する時も参加者には対等の“枠”が与えられる。社長でも部長でも新人でも同じだけのスペースが与えられる。これ、発言量に比例して枠の大きさが変化するツールがあったら面白いと思う。意外とリーダー的な人が意見を言わなくて、若い新人にどんどん枠を喰われていったり(笑)。

こんなことを講義の後に先生に話したら、当然ウザい人になってしまった。でも、若い人には「積極性」を履き違えて欲しくなかったので、ここにまとめました。

Twitterとブログの棲み分けが難しくて、ブログを書くのが億劫になっていたけど、今後は、こうした日々の気づきを週イチくらいのペースで綴っていこうと思う。

明日もがんばろう。

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