「すみません」ではなく「ありがとう」で返したい
今日、ある場所で食事をしてから自転車の鍵を外している時、目の前で荷物を広げていたオジサンがカバンからポロっと目薬を落とした。そして、当然気付いて拾うものだと思っていたらそのまま行ってしまいそうになったので「目薬落としてますよ」と声をかけた。
すると、そのオジサンは「あ、すいません」と行って目薬を拾い、そそくさと去っていく。細かい奴と言われるのは承知の上だが、こういう反応に僕は違和感を感じる。だって、正直、その人が目薬を失くそうが失くさまいが僕には何のダメージもない。それに大きな岩が落ちているならまだしも、目薬が落ちていたところで自分の進行には何ら問題がない。
そこは「すみません」じゃなく「ありがとう」でいいではないか。
感謝には「ありがとう」を贈ろう
昔、高校を出るか出ないかの頃、当時の友人と「ペイ・フォワード」というハリウッド映画を観に行った。そこそこのヒット作になった作品だ。
詳しいあらすじはうる覚えなのだが、主演は当時、子役として人気を集めたハーレイ・ジョエル・オスメントくん。彼が演じる少年は、自分が他人から受けた善意をその相手ではなく別の三人に送る「ペイ・フォワード(先に贈る)」というアイデアを思いつく。清く正しい、とてもハートウォーミングな物語だ。
ラストは衝撃の展開で終わるのだが、心震えたところで横を見ると友人が滝のような号泣で、あまりに涙ボロボロの反応を見て一気に感動が引いてしまった(笑)。
さすがに僕は善意を贈るなんて徳のあることは実践できていないけど、他人から何かしてもらった時に「すみません」と言うのは個人的に好きではない。それは仕事でしょっちゅう気遣いの「すみません」を使っているゆえ、それ以外の生活の中で「すみません、すみません」と人にペコペコしたくないのだ。もちろん、この場合の「すみません」は謝罪や遠慮ではなく感謝と同義で無意識のうちに口から出ているものだとは思うんだけど…。
「すみません」を言わない代わりに、僕は「ありがとう」をたくさん言うようにしている。スーパーのレジでおつりをもらう時も「ありがとう」、道を譲ってもらった時も「ありがとう」、エレベーターで他の人が操作盤を押してくれた時も「ありがとう」。たぶん言われる相手も「ありがとう」の方が気分がいいし、こちらも自然とポジティブな気持ちになれる。
でもね。スーパーで外国人の若い子がレジ打ちしている時に、おつりをもらって「ありがとう」なんて言うと、だいたい「えっ?」って顔をされる。たしかに、英語圏でレジを通る時に「thank you」って言う人はきっといないよね。
それでも、歳を重ねて色々と意固地になってくる中でも自然と周りに「ありがとう」が言える。そんな大人でありたいと思っている。