深夜バスの車内で遭遇したニュータイプ(シート、倒す or 倒さない?)

狭い車内は主張のせめぎあい…

久しぶりに深夜バスで長距離移動をした。飛行機や新幹線より長い時間がかかるものの、夜の時間を使って効率的に移動できる深夜バスは節約旅行には貴重な手段だ。

ただ、特に料金が安い4列シートとかになると、窮屈さと寝心地の悪さが翌日の体の痛さになってモロに返ってくる年代にさしかかってきている。そして、その車内での出来事だった。

高速バスでシートを倒す時のマナー

この日のバスは車体が古く、前後の間隔が狭くて隣の席との間に仕切りがない。さらに車内温度に対して空調がよく効いておらず、ムシムシと暑いというなかなか過酷な環境だった。

この手のバスは路線バスと違って、シートの背もたれがほんのちょっとリクライニングできるようになっている。馴染みのない人には分からないかもしれないが、通常の体勢だと上半身が直立の状態なので、人によっては、ほんの少し後ろに倒せるだけで寝られるか寝られないかくらいの違いがあるのだ。



そして昼夜問わずシートを倒す際には、うしろに座っている人の顔を見て「すみません、倒します」と一言断りを入れるのがマナーというか鉄則である。車中で寝られずしんどいのは人類みな共通のお悩みなので、もしも前の人に言われたら嫌な顔をしないというのもこれまたマナーである。

ちなみに今日の価値観に照らし合わせると、本来倒せるようになっているシートを倒すのに断りが必要なのは“謎ルール”に感じるかもしれない。しかし何も言わないままシートを倒すと、うしろの人の膝を強く圧迫して怪我をさせかねない。また、足元に置いている荷物を潰してしまうこともあるので、やはり一言だけ断りを入れることは大切なのである。

まあ、だだでさえ対面コミュニケーションが乏しい時代。知らない人の顔を見て謝ることに臆してしまう方も少なくなかろう。それなら早めに乗りこんで後ろの人が来ないうちにシートを倒して寝てしまうというのもひとつの手である。

だがしかし、この日のバスでは予想外のことが起こったのだ。

若者がおじさんに言ったのは…

搭乗開始前に停車場に着き、指定された席で荷物を整理していると、斜め前の席にアラフィフくらいのおじさんが乗ってきた。うしろの席の人はまだいない。そういうわけでおじさんはシートを後ろに倒した。

すると出発間際になって、おじさんのうしろの席、つまり僕の隣の席に乗客がやってきた。こちらは梨泰院クラスの主人公みたいな髪型をした若い男子である。

先に来たおじさんは既に上着をブランケット代わりにして寝る準備に入っている。僕もうしろの席がまだいないので、シートを倒して寝ようとしたところだった。そこで事件は起こった。

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各席ひとつずつ付いている電源にスマホの充電器をつないだイテウォン男子。スマホの準備ができたところで、目を閉じている前のおじさんの肩をポンポンと叩いて…

「すみません、席を倒すの、やめてもらっていいですか」

と言ったのだ。

な、なにぃぃぃぃぃ(←心の声 by me)


おじさんはすぐに席を起こしたが、これはキツいと思った。心通じた仲ではないゆえ一度こう言われてしまうと、言われた側はずっとシートが倒せずに直立の体勢を維持しなければならない。いや「倒さないと眠れないので…」みたいに言い返してもいいところだが、シーンと静まった車内において運悪く口論にでもなってしまったら、それこそ周囲に迷惑をかけてしまう。だから、黙ってシートを起こしたおじさんの選択は当然だろう。それにしても、深夜バスでシート倒すなは、

ニュータイプやな

と思ってしまったのとともに、自分はシートを倒せてよかったと安堵した。



その一方、バスが出発してしばらくが経ち…。消灯して真っ暗になった車内で、斜め前のおじさんは窮屈そうな体勢で寝ている。そして、そのうしろの席ではイテウォン男子がスマホをつけてゲームをやっている。暗闇の中で爛々と光るスマホの画面は、目を閉じていても瞼の奥に映り込んでくる。退屈なのかもしれないが、今この車内でそのゲームは必要なのだろうか。これもまた、彼本人がシートを倒されたくないように僕にとっては迷惑とか不快な行為の類なのだが、きっとそこまで考えが至らないのだろう。この手の“主張したもん勝ち”的な行動は自分にはできない芸当である。

ちなみに、こういうことが起きないためには、出庫時の車内放送に「シートを倒してもよい」というアナウンスを一言付け加えるべきだと思う。到着後、早朝のまどろみの中を上着を羽織ってふらふらと去っていくおじさんの背中に、マスクの裏から「お疲れ様です」と小さく声をかけて自分も帰路についたのであった。

【about me…】

鈴木 翔

静岡県生まれ。東京都中央区在住。出版社や編プロに務めた後に独立。旅好きでこれまでに取材含めて40カ国以上に渡航歴あり。国際問題からサブカルまで幅広く守備範囲にしています。現在は雑誌、実用書などの紙媒体での編集・執筆だけでなく、WEBライターとしても様々な媒体に関わっています。ジャンルは、旅、交通、おでかけ、エンタメ、芸術、ビジネス、経済などノンジャンルでありオールジャンル。これまでの経験から「わかりにくいものでもわかりやすく」伝えることがモットーです。

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