某バス停でゲームチェンジについていけない粘着質強めのオジサンに絡まれた件

この話と写真に写っているバスはまったくの無関係です

基本的に粘着質の強い人が苦手である。まぁ、その手の人が得意という方も少なかろう。

子どもの頃もソリが合わない教師は、だいたいこのタイプだった。言われたことは一発で理解するのでブチブチと長く説教されても効き目は変わらない。逆を言えば、聞く気のないことは長い説教であっても短い説教であっても効き目がない。そういうところはまったくダメな人間であると認める。



最近、旅行で訪れた某地方空港の前で市街行きのリムジンバスに乗ろうとした時のことだ。

初めて降りた空港なので外観を写真に納めてからバス停に向かうと既に2組が待っていた。先頭は還暦くらいの夫婦、その後ろには一人旅と思しき女性だ。

時刻表を見ようとバス停に近づくと、先頭の夫婦の旦那がバス停を下敷きにして何かメモを書いている。そして何だか不審そうな表情でこちらをジロリと見てくる。ずんぐりむっくりとした風貌でチョックシャツにアウトドアブランドのリュックを背負い、頭はサイドを刈り上げた正直イケてるとは言い難いツーブロックのオジサンだ。

適度に距離を取っておかないとこちらが怪我しそうな人というのは、行動の不自然さなどから何となく直感で予測できるものだ。

そう感じる理由として、まずこんな時刻表の横で何をメモしているのか。市街地行きのバスなんて乗るのは一度きりだから時刻を記録する必要はない。それかもしくは、自分は何時何分のバスに乗りました…という日記用のメモか何かだろうか。もしも何かの都合で出発時刻を記録しておきたかったとしても、今の時代、そんなのはスマホでパシッと写真を撮っておけばいいのに。

それより何よりもこちらを睨む目に猜疑心の類が漂っている。自分のメモが覗かれていると思っているのか、はたまた先頭の順番を奪われると思ったのか。いずれにせよ、こちらが知らない土地でバスの時刻表を確認するのは当たり前のことで他人が書いてるメモなんぞに1ミリも興味はない。そして、こんなところでつまらない横入りをする気もない。こんな風に見ず知らずの人間を荒んだ眼で見るオジサンに関わってもだいたいロクなことはない。

時刻表を見ると、あと10分ほどで次のバスが来ると分かった。列に並んで待っていると僕の後ろに新たに数組がやってきた。おそらく、もうバス到着まで到着便はないだろうから、待っているのは全員合わせても10人程度である。

そして時刻表の時間に遅れることなく予定通りにバスがやってきた。前後の人たちが乗る準備に入り、僕も地面に置いていたリュックを背負う。ただここで予想外の出来事が起こってしまった。後ろ乗りのバスがバス停よりだいぶ手前に停まったのである。乗車する後部ドアは、一番後ろに並んでいる人のちょうど目の前である。

もう一度言うが、待っているのは10人程度だ。そしてバスは普通の路線バスと同じ30人くらいの座席数がある車両である。ここにいる全員が二人席に座っても悠々余裕がある。つまり乗車口目の前にいる最後尾の人から乗ってくれても何ら支障がない。むしろ、この構図だと、その方がスムーズだと思う。

それでも突然起こったゲームチェンジ。たまたま同じバスに乗ることになった人はみな、予想外の展開にきょとんとしている。それゆえ私が最初に乗ろうとしたら、例の先頭のオジサンが急いで乗車口にやってきて、

私たちが最初に待っていたんだぞ

と詰め寄ってきたのである。

おお、そうか…。この場合、誰が先に乗っても座れるのでつまらないことにこだわる人だと思いつつも、空気を読んでとりあえず一歩引いた僕。もちろん明らかに全員が座れなそうな長蛇の列ができているケースだったら当初の順番を尊重する。ただ、このケースは乗れる人から乗った方が正常運行の邪魔にもならんだろうに。

そして彼らが先に乗るのを待ったが、なぜか今度は整理券のところでまごまごとしていて、なかなか先に進まない。既に僕が動いたことで、もう最初の順番なんて崩れてしまっていたので、彼らがまごついている間にササっと乗り込むと、どうやらまたオジサンのご機嫌を損ねてしまったらしく、

私たちが先に並んでいたじゃないか!

と怒鳴ってくる。

うーむ、確かに昔、簿記の授業で先入先出法というルールを習ったし、コンビニのバイトでも商品を補充する時は古い商品を前に出すのが鉄則だった。そんな決まりに乗っ取ると、先に並んでいた人が最初に乗るというのが正しいのかもしれない。そしてコロナ禍でしばらく公共交通と縁遠い生活を送っていたので、こちらの気遣いが足りなかったこともあるかもしれない。

でも、この場合はバスはオジサンのいる場所とは程遠い場所に停まったし、そもそもバス停の前に駅のホームのように乗車位置を指示する表示はない。いずれにしたって全員座れるのだから乗りやすいところにいる人から乗ればいいんじゃないだろうか。そもそも、わずか数分早く来ただけで「絶対に俺様が先だー」みたいに主張されてもさ…。正月最初の福男でも温泉旅館の一番風呂でもあるまいし、どこに座っても行き先は変わらないバスで自分が一番先に乗ることにこだわる理由って何なんだろう?

そういういろんな考えが頭の中を巡ったけれど、本人がそこまで最初に並んだ順番を大事にされていたなら本当に申し訳ない。謝るのはタダなので素直に謝ります(←全然心が込もってない、笑)。

…と、まあ、これで話が終わってくれれば、こちらもこのまま矛を収めたけれど、ここからのオジサンがマズかったのだ。

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二列斜め前の席に着いた夫婦。どうやらどうにも腹の虫がおさまらないオジサンは、こちらに聞こえるトーンで隣の妻にブチブチと文句をたれ続けているのである。

俺たちの方が先に並んでいたよな。

な、俺たちの方が先に並んでいたよな。

俺たちの方が先に並んでいたよな。な、な。

さて、ここで話を最初の言葉に戻ろう。僕は「粘着質の強い人が苦手」なのである。さらに言えば、常に一人行動が主体な人間ゆえに、こちらが一人なのを見て群れの力で自分を正当化しようとする人間はなおさら腹が立つのである。ちなみに隣で聞いている夫人は無表情で何も言わない。その様子を見ると、たぶんいろんなところで同じような目に遭っているのだろう。

これ、バスを降りるまでずっと言い続けられるのはさすがに聞くに堪えないので、正直に「何がそこまで気に食わないんでしょうか?」と斜め前の席に向かって行ってみた。すると、

私たちの方が先に並んでいただろ!

と彼は言う。あんた、結局その一点張りか…。きっと一番のポジションを得た自分が、自分よりうしろだと思っていた人間に追い越される悔しさなんだろう。一度上に立ったら後ろにいる人間は俺より下。きっと学校でも社会でもそうやってきたんだろう。あなたのことは何ひとつ知らないけれど、どういう人生を歩んできたか、いろいろ勝手な妄想が広がるよ。



そして「みんな問題なく座れているけど、マズいことありますか?」と返すと、「そう言う考え方なら言っても仕方ない…」と先細った声でボソッと言ってようやく黙ったのである。自分からつっかかってきて、それも何だか。

結局、バスは空港で待っていた全員を乗せてもスッカスカの状態で市街地へ向かった。そして中央駅のバス停でオジサン夫婦は降りて行った。自分が正しいことをしたとは思わない。むしろ非の方が大きいかもしれない。しかしながら、マジメは素晴らしい反面、世の中には状況の変化にまったくついていけない人がいるものだなと思わされた件だった。

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鈴木 翔

静岡県生まれ。東京都中央区在住。出版社や編プロに務めた後に独立。旅好きでこれまでに取材含めて40カ国以上に渡航歴あり。国際問題からサブカルまで幅広く守備範囲にしています。現在は雑誌、実用書などの紙媒体での編集・執筆だけでなく、WEBライターとしても様々な媒体に関わっています。ジャンルは、旅、交通、おでかけ、エンタメ、芸術、ビジネス、経済などノンジャンルでありオールジャンル。これまでの経験から「わかりにくいものでもわかりやすく」伝えることがモットーです。

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