銀座でドン引きしてしまったインバウンドの驚愕モラルハザード
連日これほど暑いと、自転車で街なかを走っていても30分くらいの間隔でどこかに避難しなければ溶けてしまいそうになる。
しかし、ところどころでカフェなんかに入っていては財布への負担が馬鹿にならない。コンビニのイートインなんかでコーヒーくらいなら…といっても、一杯百円も塵も積もれば山となる。月給制の会社員などと違い、一件あたりの仕事で報酬を得ている自営業者はそういうところにかなり敏感なのである。
そんな、ただ体を冷やしたいだけのタイミングで強烈な誘惑を放ってくる場所のひとつが百貨店だ。玄関の前を通るだけで押し寄せてくる冷風。It’s cool! 店内に吸い寄せられていく自分は、まるでN極を近づけられたS極のようだぜ。きっと真夏の百貨店を訪れる少ない割合の人が、僕と同じ冷房難民ではなかろうか。
昨日もそんな感じで銀座三越にピットイン。門番のライオンさんに「探し物はないけれど、クーラーの風に吸い寄せられて中に入るだけさ」とお断りして、厳しい玄関をくぐる黄色アロハ&短パンの男性。
昔は地元・浜松の百貨店に出かける時でさえ、おしゃれをしていかないと恥をかく…みたいに教えられてきた年代だ。東京に行くともなれば、田舎者に見られぬよう、その時の自分史上最高の洒落込みようで出かけたものだが、インバウンドが爆発的に増えてガラッと様相が変わった昨今の東京にはドレスコードなんてすっかり存在しない。銀座のど真ん中にある銀座三越も、ほにゃららユニバーシティみたいな英字がプリントされたタンクトップやホットパンツみたいな格好の外国人が溢れてかえっている。
だから、アロハで歩こうともまったく恥ずかしくはない。ただし、その格好でブランドショップのフロアを歩くのは個人的に耐えられないし、ふらりと入ってウィンドウショッピングをする気もないので、必然的に足が向く先はデパ地下の食品売り場となる。
デパ地下というのはいつ来ても愉快な場所だ。日本全国の美味しそうなものが集まっている。ただし、高級弁当や量り売りの惣菜、そして1個だけ買うのは気が引けるスイーツも晴れの日に食べるようなものばかりで、普段自炊がデフォルトな独り者のニーズにはやや合わない。よって、いつも買って帰るものといえば、一人ですぐに食べ切れるパンくらいなのだ。
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そういえば頂き物のフルーツバターが冷蔵庫に眠ったままなので、あれに合わせるバゲットを買って帰ろう。そう思ってベーカリーに寄ったら、やはりお盆休みとあってレジ前には長蛇の列が。店の入り口にはコック帽のスタッフが立ち、焼き上がったコーンパンを絶賛販売中である。
わざわざフランスパン一個買うために長い列に着くのもなぁ…とは思ったが、近所のスーパーのパンとここのパンでは雲泥の差があるので、仕方なく並ぶことにする。目当てのパンをトレーに乗せて列の最後尾へ。前にはインバウンド旅行者と思しきオジサン。彼のトレーには、目下売り出し中のコーンパンが一個乗っている。あー、それも美味しそうだよね。何たって焼きたてだしね。俺も家族とか待ってたら、そういうの買って買えるんだけどね〜。
なんて思っていたら、まさかオジサン、そのパンを手で掴み、
パクっとかじってる〜。
まだ会計前のパンを
食べちゃってる〜。
おそらく人生で初めて見るその光景にマジか…という驚き。というか、ドン引きの視線を送る僕と目が合うと、
お前、何見てんだよ?
というドヤ顔。どう考えたっておかしなことしてるのに、
その強気は一体何なのだ?
ここは日本でも1、2を争う高級百貨店だぜ。いや、そうでなくても会計前の物を食うのはアウトっしょ。つーか、現時点で代金払ってないんだから、これって万引きと一緒なんじゃ…。
自分ルールによる驚愕の後払いシステム。コンビニ感覚の勝手にイートイン。
結局、レジの順番が回ってくる頃には半分くらいを食べ終えてお会計。レジの店員も苦い顔していたけど、これといって注意をするわけでもなく普通に捌いていたので、きっとここでは日常茶飯事のことなのだろう。
自分の国でも普段、一等地の百貨店で同じことをするのだろうか。いや、たぶんやんないと思うんだけど…。冷房に当たりたくて百貨店に寄る人もどうかと思うけど、そんなの比較にならない変人に遭える街、世界のGinzaなのでした。
【about me…】
鈴木 翔
静岡県生まれ。東京都中央区在住。出版社や編プロに務めた後に独立。旅好きでこれまでに取材含めて40カ国以上に渡航歴あり。国際問題からサブカルまで幅広く守備範囲にしています。現在は雑誌、実用書などの紙媒体での編集・執筆だけでなく、WEBライターとしても様々な媒体に関わっています。ジャンルは、旅、交通、おでかけ、エンタメ、芸術、ビジネス、経済などノンジャンルでありオールジャンル。これまでの経験から「わかりにくいものでもわかりやすく」伝えることがモットーです。