高級傘の所有はNG⁉︎ 風の埋立地・カチドニアこと東京・勝どき

この世の終わり感…

かつて「風の大地」と呼ばれる南米のパタゴニアを訪れたことがある。

風の大地という名前は、かつてこの地を訪れた椎名誠氏が著書に付けたタイトルから日本人にも広まったものだと理解しているが、チリとアルゼンチンにまたがり南米大陸の南端に位置するこの地方は、パンパの荒涼とした草原に強風吹き荒ぶ、かつては人が暮らすには厳しい土地だった。「世界の果て(fin del mundo)」と呼ばれる環境に広がる手付かずの大自然、爆音を上げて崩落する大氷河、異世界にいるような屹立とした山々の稜線、そこで目の当たりにした自然の数々は感動の連続だったが、クライマーたちの憧れであるトーレス・デル・パイネを中心とするパイネ国立公園を訪れた時、幾度と吹き付けてくる強風で大河に突き落とされそうな体験をした。



そして現在、今暮らす東京の勝どき。都心に隣接した新興住宅地であり、タワマンが立ち並ぶ手付かずの自然とは最も対照的な環境であり、グアナコのような可愛い動物ももちろんいない。パタゴニアとの共通点といえば東京都心部の“南端”ということくらいしか思いつかないここではあるが、この街も日常的に驚くような強風が吹く。

ここに越してきてまず最初に驚いたことは、雷雨の時に経験する雷の強さだ。東京湾に接する土地柄、ゲリラ雷雨が起こった時などは南の空に1分おきくらいの間隔で南の空に稲妻が走る。続いてやってくる耳をつんざくような轟音。たびたびやってくるそれは今まで住んだ場所であれば年に一度あるかどうかという強さで、空から魔王でも出てきそうな“この世の終わり”感があふれている。


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そして雷と等しく強力なのが荒天時に襲ってくる風だ。

南北を東京湾に囲まれた地形だからか、この街は日頃から風が強い。

降雨時でなくとも、春一番あるいは秋風が訪れる時季など強風が吹く際には、とんでもない爆風に襲われる。向かい風を喰らった時など、前に進もうとしても歩けない。それは70キロ以上ある僕の体が吹き飛ばされそうになる勢いなのだ。

まるで一年に何度も台風が直撃するような、その有り様は地球の裏側にある風の大地・パタゴニアにならって、風の埋立地・カチドニアという呼び方がふさわしい。

そんな感じなので、このカチドニアに住もうという人に一つアドバイスがあるとすれば「高級傘を持つのはやめた方がいい」ということ。なぜなら、運が悪いとマンションやアパートを出た瞬間に“秒”で傘が潰れることが珍しくないからだ。



雨の日に外へ出て傘を開いた途端に強風がやってきて、バサッと骨がひっくり返る。さらにはすぐにポッキリと折れてオジャンになる。たとえ最初に襲われないまま家を出れたとしても、風向きに阿って歩かないと十中八九、スーパーや駅までの道すがらで強風に襲われる。体は痛くなくても財布には痛い“骨折”だ。

正直、普通の傘だと何本持っていても足りない。傘にもおしゃれを求めたい人は高級な傘を何本も潰していい覚悟を持つか、風が強い日にはイギリス人のように傘をささない生活をするかの二択ができなければ、このカチドニアに住むべきではない。

ちなみに僕はいつ御陀仏になってもいいよう、ファミリーマートで千円以下で買える、骨の折れないことを売りにしたビニール傘を使っている。コンビニ傘といって侮ることなかれ、この傘は風に打たれて骨がひっくり返ることはあれど折れることはそうそうない。たとえ風で瞬殺されたとしても値段が値段なのであきらめがつく。

まぁ、それでもカチドニアは、パタゴニアの自然と対照的ながらその魅力と比べても劣らないくらい都会的な暮らしやすさがある街であるということを付け加えてこの話の締めとしたい。

【about me…】

鈴木 翔

静岡県生まれ。東京都中央区在住。出版社や編プロに務めた後に独立。旅好きでこれまでに取材含めて40カ国以上に渡航歴あり。国際問題からサブカルまで幅広く守備範囲にしています。現在は雑誌、実用書などの紙媒体での編集・執筆だけでなく、WEBライターとしても様々な媒体に関わっています。ジャンルは、旅、交通、おでかけ、エンタメ、芸術、ビジネス、経済などノンジャンルでありオールジャンル。これまでの経験から「わかりにくいものでもわかりやすく」伝えることがモットーです。

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