案外、自分というのは自分が思っているより自分のことを知らない


前よりも広い部屋に引っ越し、それに伴って家具と家電をほとんど新調した自宅が快適なので、以前に比べてカフェ作業がめっきり少なくなった。物価高でコーヒーも値上がりして、毎日のようにカフェに通っていたら積み上がるコストもバカにならないしね。

そんな中、ひさしぶりに近所のドトールでパソコンを開いていたときの話。



お昼時が過ぎた店内は満席。大半が住宅地で若いファミリー層が多かった勝どきに比べて新しい街のカフェにいる客層は、ビジネスマンや学生、お年寄りのグループなど属性や年代が多彩だ。

どの店でも僕は窓際のカウンター席を選ぶことが多いのだが、ひとりで黙って作業をしていると、近くのいろんな会話が聞こえてくる。この日もとりわけ大きな声で会話をする男性2人組の会話が耳に入ってきた。

どうやら何か仕事の話をしているようなのだが、そういう話をデカい声で話す人たちって、いわゆる“意識高い系”であることが多い(←という勝手な偏見、笑)。

新しいビジネスの話をしているみたいなのだが、片方の一人が相手にこう言う。

「僕、人前に出るのとか緊張するから、ここで練習してもいいかな?」

おっと何を始めるのかね?って思ったら、突然声を張り上げて、

「私は東京都から来ました〇〇〇〇と申します。宮城県の〇〇〇〇〇〇大学を卒業し、その後は…」

こんな風にスピーチの練習をやり始めたのだ。

どこの誰だか存じ上げないが、店内じゅうにアンタの個人情報がダダ漏れだぜ。




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さらに「私は東京都から来ました…」と何度も同じ文言を繰り返す彼。

満席でありながら騒がしくない店内にその大声が響き渡る。

それを聞いていて僕は思った。

いや、あんた、緊張しいどころか、むしろハート強くねえか?

だって、こんな誰もあんたに関心を持っていない場所で、周りに聞こえる大声で自己紹介をするなんて、おそらく本番のプレゼンだかセミナーよりもハードルが高いと思うんだ。俺だったら恥ずかしくて無理。



いや、度胸をつけるためにあえてここで恥ずかしい思いをしているのかもしれないが、それにしたって普通に周りへの迷惑でしょう。

何だか本人よりも聞いている側の方が恥ずかしい気持ちになってしまった。

他愛もない話だが、これを何か学びに変えるとしたら、自分というのは案外、自分が思っているほど自分のことを知らないものだと考えさせられた一件であった。

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鈴木 翔

静岡県生まれ。東京都中央区在住。出版社や編プロに務めた後に独立。旅好きでこれまでに取材含めて40カ国以上に渡航歴あり。国際問題からサブカルまで幅広く守備範囲にしています。現在は雑誌、実用書などの紙媒体での編集・執筆だけでなく、WEBライターとしても様々な媒体に関わっています。ジャンルは、旅、交通、おでかけ、エンタメ、芸術、ビジネス、経済などノンジャンルでありオールジャンル。これまでの経験から「わかりにくいものでもわかりやすく」伝えることがモットーです。

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