イビキは生理現象と言いますが…。秋田の宿でクマった件について


出張で秋田市に来ている。偶然にも日本全国クマ騒動の真っ最中、その再注目地となっているここでも秋田駅近くの公園でその姿が目撃されたばかりで、それを受けて中心街の百貨店が扉を閉鎖するなど、いろんなところで警戒心の高まりを感じる。

そんな中、今回は市街地にある温泉施設の宿泊ブースを利用することにした。

宿泊費はクライアントから出るので、ちゃんとしたホテルに泊まることもできたのだが、いろいろと書き仕事が溜まっているので個室を取ったところでどうせ作業をして寝るだけであり、別にホテルでなくてもよかろうと経費をケチったのである。



しかし、結果的にこの選択が失敗につながった。

温泉というものに入ると全身がぐったり疲れる私。今回もその例に漏れず、夕食を食べてひとっ風呂浴びたら一気に眠気に教われ、バタンキュー(←死語)で23時過ぎには夢の世界へ。ところが、その後パッと目が覚め、全然眠れていないと思ってスマホを見ると、やっぱり時刻はまだ深夜2時過ぎ。

こういう入浴後は大体眠りが深いので、どうしてこんな中途半端な時間に目覚めてしまったのかと不思議に感じつつ再び目を閉じると、そこで目覚めてしまった原因に気付いた。

グー、グー、ゴー、グオー、ガー

隣のブースがめちゃくちゃうるさい。

そう、隣のイビキが凄まじい勢いで聞こえてくるのだ。

ガー、ググッ、グホッ、ガー、グー

それはタイムリーな話題に絡めて例えるなら、

クマの鳴き声みたいな爆音である。




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隣との境界は薄い壁一枚。よって、すぐ隣の私はその騒音をダイレクトに喰らっているわけだが、フロア全体に響いているから反対側の隣からもチッと舌打ちが聞こえてきて、爆音とイライラ感の挟み撃ち状態。まさか、こんな屋内でクマみたいな奴に遭ってしまうとは、とんだ災難だ。

チェックインの時にもらった耳栓をしたところで効果はなく、自前のヘッドホンで音楽をかけて打ち消そうとしても、それすら貫通してくる強烈な破壊力。かといって個人対応で本人を起こして注意などすればトラブルに至るのは必然であり…。

そういうわけで、これはたまらんとフロントまで相談しに行ったら、スタッフからは案の定、

「イビキは生理現象なので起こしたりできないですねー」

と、にべもない返事。まあ、確かにイビキというのは本人の意思とは関係なく出てしまうものだし、くしゃみや屁やゲップと同じ生理現象ということで片付けたい理屈も気持ちも理解できる。

が、しかし、

その生理現象のために、周囲の人の「睡眠」という生理現象が阻害されてるのはどうなんだい?

……と言ってやりたいところだったが、それを言ったところで何が解決するわけでもなく、むしろ俺の方を「面倒な客だなー」という目で見ている感じだったので、胸の内に留めることにした。

結局、満室のため他のブースに移ることもできないとのことだったので、それなら近所のファミレスなんかで夜を明かした方がまだマシだと思い、アテもないまま荷物をまとめてチェックアウト。運良く近くに快活clubを見つけて事なきを得た。



爆音イビキに遭ってしまうのは珍しいことじゃない。深夜バスを使う時などにもよくあることだ。その上で、イビキというのは本人が望まない症状みたいなものだと理解しているし、『安かろう悪かろう』を完全に仕方ないと思えないこちらが悪いのかもしれない。ただ、おそらく本人にも大きなイビキを出してしまう自覚があるのだろうから、それなら泊まる場所は個室を選ぶとか、移動は日中のうちに済ますとか、他人に迷惑をかけない最低限の自重は必要なのではなかろうか。それくらいの愚痴をこぼすくらいの権利はあるだろう。

秋深まる寒空の下、どこでクマと遭遇するか分からない恐怖とともに暗い道を歩きながら、「餌を求めて人里までやってくるクマにも困ったものだが、イビキの自覚がありながら自我を通してしまう人にも困ったものだ」と感じた一件であった。

about me

鈴木 翔

静岡県生まれ。東京都中央区在住。出版社や編プロに務めた後に独立。旅好きでこれまでに取材含めて40カ国以上に渡航歴あり。国際問題からサブカルまで幅広く守備範囲にしています。現在は雑誌、実用書などの紙媒体での編集・執筆だけでなく、WEBライターとしても様々な媒体に関わっています。ジャンルは、旅、交通、おでかけ、エンタメ、芸術、ビジネス、経済などノンジャンルでありオールジャンル。これまでの経験から「わかりにくいものでもわかりやすく」伝えることがモットーです。

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