ガンプラ模型店で考えさせられた「リアル店舗でモノを買う意義」とは?

ある金曜の夜、ひさびさにプラモを組み立てたい意欲が湧き、ガンプラを1体作り終え、スミ入れまで終えると窓の外は土曜の朝。我が家の“在庫”がひとつ無くなったので次は何を買おうかなとネットで再販情報を漁っていたら、ふと作業済みの机の上が気になった。
そういえば、ガンプラを作り始めてから一年半。ずっと同じニッパーを使っている。その間、マーカーだのデザインカッターだの艶消しスプレーだの買い増してきたのに、ニッパーは最初に買った100均の安物を使い続けている。もうお試しでプラモ作りをしているわけではないから、それなりのものに買い替えてもよかろう。ちょうど月末でギャラも入ったことだし。
そういうわけで銀座近辺にニッパー探しに出かけたわけだが、ビック◯メラも◯品館もなぜか品切れ商品ばかりで、見つからないというか選択肢が乏しい。これなら、またアキバ近辺に行く時までおあずけにしようか。そう諦めかけた時に、そういえば近所にまだ新しめの模型専門店があることを思い出した。
その店は某雑居ビルの最上階にある、ガンプラファンにとって知る人ぞ知る穴場的な模型店だ。今日はガンプラを探しにきたわけではないが、専門店であればニッパーも幅広く取り扱っていよう。エレベーターで最上階に上がり、店に入ると、さっそく店員が登場。
店「何かお探しでしょうか?」
小柄、爽やかめの風貌でおしゃれメガネをかけた店員が明るい声で言う。
鈴「ニッパーを探しに来たんだよね」
店「え、初めてのニッパーですか?」
模型マニアしか集まらない店でそれは、「え、あんた、プラモ作ってるのにニッパー持ってないの?」という、やや上から目線の響きであったが、まあそれはいいだろう。
鈴「いや、安いの使ってるけど、給料入ったんでガンプラ作るのに少しいいやつを買おうかと」
体裁を考えて“安いの”と言ったが、ここで100均のやつ使ってます…なんて恥ずかしくて言えない。
店「これなんかどうですか?」
と幾つか商品がかかったラックから彼が取って見せたのは約5000円のニッパー。ニッパーで5000円というのは高級品なのか中級品なのかは分からない。むしろ、高ければ使いやすいのか、切れ味が良いのか、その辺の品質の差も存じ得ない。
鈴「ここまで高いやつは要らないなあ」
品質の良さを見るより先に、値段が僕のニーズと見合わない。
店「そしたら、このあたりなら2000円くらいっす」
そう言って、ラックの中段くらいにかけられた商品を指差すおしゃれメガネ。
2000円か、今の自分のレベルからすれば、それくらいのやつが妥当であろう。
鈴「あー、それくらいのがちょうどいいな」

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商品を手に取る俺。この時点で、ほぼ購入を決意した。だが、幾つかある2000円台商品のうち、どれが自分に合っているのだろうか。せっかくリアル店舗まで足を伸ばし、こうして店員と話しているのだから、そのあたりは納得しながら吟味したいところだ。そこで、
鈴「やっぱさあ、良いニッパー使ったらクオリティって上がるのかな?」
と、もう少しだけ会話を続けてみる。すると、
店「ん~、人によりますかね。ヤスリとかデザインカッターとか使う人なんかは、それで綺麗にしちゃうんで、結局どのニッパー使っても大して仕上がりは変わんないっす」
あ、それ言っちゃう。(デザインカッターで切断面を綺麗にするとか、それならもうやってる)←心の声
オタクという種族は、自分が好きになると余計なことまで喋り出す。目の前にいるおしゃれメガネはガチオタクの空気を醸していない爽やかボーイではあるが、ここで働いているからには、オタク気質を持った人物であることは違いなかろう。彼の言う通り、どのニッパーを使っても大差ないのなら、今まで通り100均のニッパーのままで良いのではなかろうか。そう思いながら、商品をラックに戻す俺。
鈴「そうなの? じゃ、新しいの買わなくてもいいかな~」
そう告げて、何も買わずに店を出る男性(俺)と、みすみす客を逃す正直者の店員。もしオタクであれば「それでも高いやつ(良いやつ)を持ちたい」とお金を落としたかもしれないが、俺のようにそうでもない人間では、その商売気のないセールストークで落とすことは難しいだろう。むしろ「高ければ高いニッパーを使うほど、綺麗に仕上がりますよ」と嘘でもいいから言ってくれれば、こっちも乗せられて5000円のを買ったかもしれないのに。
結果、ニッパーを買うはずの予算が浮いたので、高級アイスを買って帰ってきた次第である。
ネット通販であらゆるものが買えてしまう時代、「わざわざリアル店舗まで行ってモノを吟味する意味とは?」を店員に問いたくなった一件であった。

about me
鈴木 翔
静岡県生まれ。東京都中央区在住。出版社や編プロに務めた後に独立。旅好きでこれまでに取材含めて40カ国以上に渡航歴あり。国際問題からサブカルまで幅広く守備範囲にしています。現在は雑誌、実用書などの紙媒体での編集・執筆だけでなく、WEBライターとしても様々な媒体に関わっています。ジャンルは、旅、交通、おでかけ、エンタメ、芸術、ビジネス、経済などノンジャンルでありオールジャンル。これまでの経験から「わかりにくいものでもわかりやすく」伝えることがモットーです。
