実録・アポ電体験! 詐欺野郎が逃げ出して自分のヤバさに気付く(笑)


最近スマホに入れたばかりの警視庁アプリから、毎日のように「お住まいの地域でアポ電の被害がありました」という通知が飛んでくる。ネットに尋ねてみると、アポ電というのは

『特殊詐欺や強盗の犯行前に、警察官、銀行員、親族になりすまし、電話で家族構成、資産状況、在宅時間などを探る予兆電話』

の総称らしい。



日本にいても海外にいても、呼んでもないのに寄ってくる奴は最初からシャットアウトする性分なので、自分はこんな詐欺の類にはかからない人間だと自覚している。しかし、そういう自信に溺れた人間こそ、騙し言葉と自分の中の符号がピタッとハマった時に案外簡単に騙されてしまうものなのかもしれない。そんなお話だ。

ある土曜日の午後、布団にくるまって昼寝をしていたら珍しくスマホに着信があった。仕事関係の連絡はメールかチャットかでほぼ完了する時代、特に週末の知らない番号からの電話は出ないようにしているが、末尾が「110」だったので無視できないと思って出てしまった。

相手は警視庁第二課の刑事を名乗る“イノウエ”という男だった。声の張りと落ち着きから察するに歳は30代から40代くらいだろうか。目覚めたばかりのぼんやりした頭で用件を聞くと、

「長野県で起こったマネーロンダリング事件を捜査していく中で、あなたの〇〇カード(クレカ)が見つかった。話を聞きたいので長野県警まで来てほしい」

と彼は言う。

リアリティがあるのだかないのだかよく分からない話だ。それにマネロンに関連して僕のカードが見つかったとして何の問題があるのか、もう少し詳しい説明があってしかるべきだろう。それに会って話聞きたいならわざわざ長野県警まで行かなくたって霞が関の警視庁でいいだろう。いや、むしろ、お前がウチの近所の署まで来い。

…など、普通に考えればツッコミどころが満載なのだが、ここで話に乗ってしまったのが良くなかった。なぜなら僕はその○○カードの所有者だったのである。

そして、そのカードは普段、通販の電子決済程度にしか使わないので保管場所も正直あいまい。なおかつ、少し前に長野県に出かけたばかりでもある。つまり「自分が所有しているカード」と「長野行き」という2つの符号が揃ってしまい、何らかの都合でカードを持ち出した先で紛失していてもおかしくないと、まともに相手をしてしまったのだ。

だが、しかし、この男はタイミングが悪かった。なぜなら寝起きの俺はだいたいいつも、

最高に頭が働いていないのだ。

そういう時ははっきり喋ることもままならない。例えば徹夜で原稿を上げた後に仕事相手から電話がかかってきた時なんで酷いもんだ。志村けん演じる婆さんの「あんだって?」レベルなのである。




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鈴「え~、○○カードは家に置いてある気がするけろ。どっこに置いたっけなぁ~。」

きっと相手は、あまりの呂律の回ってなさに俺が酔っているか○○ッているかに感じたことだろう。

こちらの話に対して何かそれっぽいこと言ってるけど、寝ぼけた頭にゃ中身がまったく入ってこない。なお、この段階でカードの有無を見に行けば良かったのだが、寝起きかつ寒くて布団から出たくもない。

鈴「たぶんさぁ~、○○の上とかに置いたんらけど、オレ、最近持ち歩いたっけな~?」

相手が警察だというのに焦る感じもなく、まったく会話にならない返事ばかりで向こうの方が困惑しちゃってる。悪いがこちとら海外でボラれそうになったり、ニセ警官に遭ったり、スリを退治したり、トラブルと遭遇することに免疫が付いてしまっていて、今や何があっても大して驚かないのだよ。

たしか、

鈴「あんた、本当に警視庁の刑事さんかい?」

と尋ねた気がするけど、

「警察の者です。この番号にかけ直してもらえば警視庁にかかりますよ」

みたいなことを言われた記憶がある。

鈴「ところでさ、よく分かんないすけろ、それって僕がカガイシャとして疑われてんでしょうか~。そえともヒガイシャということなんれしょうか~?」

そう尋ねると、彼は、

「詳しいことは署でお話ししますので、長野県警の○○署まで来てもらえますか」

と言う。

その時「○○署」のところが、はっきり聞き取れなかった。交通費出してくれるなら諏訪か松本くらいだったら辛うじて行ってやってもいいが、長野市とか飯田とかはさすがに遠いし、この時期寒いから無理だぞ。

あ、そういう問題じゃないか。

鈴「すんません、長野の何署って言いました?」

って聞き返したら、こいつめんどくせーって思ったのか、そこでブチっと電話が切れた。



結局、個人情報を聞かれるわけでもなく、口座情報を抜かれることもなく、在宅か否かも確かめられず。布団から出て棚の中を確認したら普通にカードがある。そこで「ああ、アポ電というやつか」と。

よくよく考えればカードの所持なんてどこかから個人情報が洩れていれば分かりそうなものだし、東京に住んでいれば誰しも年に一度くらいは長野県に行っていてもおかしくない。ただ、符号がひとつくらいなら疑う気しかおきないが、「末尾が110」ということも含めて3つ揃ってしまうと一気に真実味を帯びて聞こえるのは危険だと感じた。

あと、これも海外からの着信だったが、昔に比べて国際電話の音声品質が格段に上がっているのが厄介で、普通に国内通話と変わらないレベルのクリアさだと、高齢者なんかは疑問を抱かないのではなかろうか。

とにかく「詐欺に巻かれて善光寺」とならなくて良かった一件であった。

皆さんも怪しい電話にはくれぐれもご注意を!

about me

鈴木 翔

静岡県生まれ。東京都中央区在住。出版社や編プロに務めた後に独立。旅好きでこれまでに取材含めて40カ国以上に渡航歴あり。国際問題からサブカルまで幅広く守備範囲にしています。現在は雑誌、実用書などの紙媒体での編集・執筆だけでなく、WEBライターとしても様々な媒体に関わっています。ジャンルは、旅、交通、おでかけ、エンタメ、芸術、ビジネス、経済などノンジャンルでありオールジャンル。これまでの経験から「わかりにくいものでもわかりやすく」伝えることがモットーです。

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