行き過ぎた同調圧力。僕はそれを「トゥーノーマル」と呼ぶ

先日、ある大学の教授と教育のオンライン化について話した際、彼がこんなことを言っていた。

「物理的な距離が無いオンライン教育の普及はいろいろな可能性を秘めているけれど、やはり留学にしても現地の温度や匂いなんかはその場所に行かなければ分からない。例えば、暑い国では労働生産性が落ちるなんて話があるけれど、なんでそうなるかなんて、その国の暑さを経験してみないと分からないことでしょ。選択肢が増えることはいいことだけど何でもオンラインに替えるのは僕は間違っていると思う」

今は一人一人が暗中模索の中で生活しているけれど、これ、これからの世界ですごく大切にしたい価値観だ。



今じゃリモート結婚式というのがあって、料理までクール便で自宅に運ばれてくるらしい。小さな祭壇付きで“移動葬式”ができる新型霊柩車なんていうのも出てきているそうな。

それらは新しい手段やビジネスのスタイルとしては、もちろん「アリ」だと思う。ただ僕が少し危惧しているのは、人々の野性の部分が露出してきている今の状況下において、目先だけで人の接触を「悪」だと見なし、「こうあるべき」という押し付けに突っ走る人が出てきそうなこと。新しい仕組みが選択肢の一つになればいいけれど、それらが只の従来定義を塗り替えになったり、過剰な価値観を押し付ける道具になるのは間違っている。

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冠婚葬祭にしても従来通りの形でやりたい人は今の状況を考慮しながら細心の注意を図ってやればいいし、新しいスタイルでやりたいという人はそちらを選べばいい。個人の都合と目的に合ったやり方が選択できるべきで、もしやり方を好まないという人がいたら、その人が欠席すればいいだけ。やる側も欠席する側も咎めるべきじゃないし、当事者じゃない者が他人を攻撃するなどもってのほかだ。大事なのは周囲へのリスペクト。難しい時代だけど選択肢は広くあるべきだと感じる。

そうした考えの上で、今の目先の判断だけによる“行き過ぎた普通”の押し付け。僕はこれを「トゥーノーマル(Too normal)」と呼ぶことにした。

答えがない問いほど答えを他人に求めたくなる。そんな中で今は他人を思いやる優しさがより一層試されているような気がする。

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鈴木 翔

静岡県生まれ。東京都中央区在住。出版社や編プロに務めた後に独立。旅好きでこれまでに取材含めて40カ国以上に渡航歴あり。国際問題からサブカルまで幅広く守備範囲にしています。現在は雑誌、実用書などの紙媒体での編集・執筆だけでなく、WEBライターとしても様々な媒体に関わっています。ジャンルは、旅、交通、おでかけ、エンタメ、芸術、ビジネス、経済などノンジャンルでありオールジャンル。これまでの経験から「わかりにくいものでもわかりやすく」伝えることがモットーです。

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