同級生にいた「最強のエピソード潰し」プーヤンのお話

近所のベーカリーにぶらさがっているクマ

地元の住宅地にクマが出現!

上京して10年以上が経つが、毎日、地元である静岡の県内ニュースのチェックは欠かしていない。生まれ育った土地への愛着もあるが、情報産業を生きる端くれとしては、地元に帰った時に「え、お前、あれ知らないの?」と浦島太郎状態に置かれるのが嫌だという方が多分強い。

よって、Yahoo!ニュースレベルではあるが、ほぼ毎日の習慣として静岡県内のニュースを見ている。静岡全体と考えると意外と地元の友達よりも情報だけはいろいろ知っているかもしれない。



さて、その静岡県のニュースで、僕の地元中の地元の住宅地近くにクマが出没したと大きく報じられていた。クマが出ること自体は大して珍しくない山間部ではある。ただ、本当に山に囲まれている長野県境側に対して比較的民家の集まっている南部の地域なので、住宅地の近くまで熊が降りてくるというのは珍しいことだ。

はて、時期外れに冬眠から目覚めてしまった個体がエサを探して山の麓まで降ってきたか。

コメ欄を見てみると、地元の方と思しき人のコメントの中にさらに細かな地名が書かれている。なるほどあの辺か…と、だいたいの場所が頭に浮かぶ。

だがしかし、その刹那、

あ、これプーヤンちの近所じゃねーか

と、一抹の不安が僕の脳裏をよぎるのだった。

ボクもそういうこと一回だけあるや

僕の小中時代の友人に「プーヤン」という子がいた。もちろん、あだ名である。

小さな頃から、ぽっちゃり体型だった彼。小学校の5つくらい上の学年に同じくぽっちゃり体型のプーヤンという先輩がいて、誰が言い出したのかは知らないが、その彼から“二代目”を襲名した。

そんな経緯で付けられたあだ名なので、いま同窓会なんかで本人に会った時にプーヤンなんて気安く呼んだら飛び蹴りか巨体を生かしたボディプレスを喰らうだろう。とはいえ、本名を出すわけにもいかないので、ここでは愛着を込めてプーヤンという呼び名を使わせてもらおう。

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このプーヤン、とても経験値高めの子どもであった。ただし真偽のほどは分からない…という注釈付きであるのだが。

プーヤンとは小中学校の中で何年間か同じクラスだったことがある。プーヤンはクラスメイトが集まる会話の中ではMCタイプではない(ちなみに、この役割は大体いつもボクだった)。かといって、自分から話題を発するような一列目芸人のタイプでもない。多くの場合、まん丸な顔に笑みを浮かべながらムフムフと人の話を聞いている“ガヤ”のタイプだった。

だがしかし、プーヤンには悪い(?)癖があった。それは他の人が繰り出した話題に「ボクもそういうこと一回だけあるや」と介入していくところである。

誰かが道で財布を拾ったという話をすれば「ボクもそういうこと一回だけあるや」。

テレビゲームでありえない高スコアを叩き出したという話をすれば「ボクもそういうこと一回だけあるや」。

学校の廊下で教頭先生にカンチョーをしたという話をすれば「ボクもそういうこと一回だけあるや」。

クラスの一番可愛いこと両思いだったという話をしても「ボクもそういうこと一回だけあるや」。

どんなことでも

「ボクモソウイウコトイッカイダケアルヤ」

と、不気味な笑顔を浮かべながら絡んでくるのである。

無事でいてくれ、プーヤン

他人の話を自分ごとに関連付けて話題の中心を掠め取っていくというのは、大人の社会においても上手いコミュニケーションの常套手段である(ただやり過ぎるとジコチューな人に見られかねない)。だから何に対しても「ボクもそういうこと一回だけあるや」と言って、仲間の注目を自分に集めるウーヤンはある意味で賢い子どもだったのかもしれない。

ただ、最初に話していた子どもからするとたまらないものがある。なぜなら自分が気持ち良く話しているところを「ボクも一回だけあるや」といって本当に繋がりがあるのかわからないような話をかぶせられ、プーヤンに話題を奪われるのである。つまりプーヤンは他人の話を潰す

最強のエピソードキラー

であった。

高校を出て実家から通える大学に進み、どこかの調査期間に就職して何年かしてそこをクビになり、平日に地元のパチンコで見かけたという目撃情報までは掴めているプーヤン。妹しかいない長男だから今も実家に住んでいる可能性は高い。



予測というのは当たって欲しい予測と当たって欲しくない予測に分かれるが、クマに喰われたプーヤンというのは明らかに後者の予測である。

いや、たとえ食べられてないにしても、

ボク、一回だけクマと戦ったことあるや

という武勇伝を作るためだけにクマを探したりしていないだろうかと僕は不安を感じているのである。

やめろ、プーヤン、そいつは危険だ。

同窓会のネタ作りなんかのために体を張らなくていい!

もう10年以上会えていないプーヤン。元気にしていたら、一回だけこちらまで連絡をください。笑

※地元では該当の報道以後、2週間以上クマが出ていないそうです。良かった。

【about me…】

鈴木 翔

静岡県生まれ。東京都中央区在住。出版社や編プロに務めた後に独立。旅好きでこれまでに取材含めて40カ国以上に渡航歴あり。国際問題からサブカルまで幅広く守備範囲にしています。現在は雑誌、実用書などの紙媒体での編集・執筆だけでなく、WEBライターとしても様々な媒体に関わっています。ジャンルは、旅、交通、おでかけ、エンタメ、芸術、ビジネス、経済などノンジャンルでありオールジャンル。これまでの経験から「わかりにくいものでもわかりやすく」伝えることがモットーです。

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