スクーターと自転車の衝突事故に遭遇して感じた、交通マナーについてのお話

高齢者男性のスクーターと女子高生の自転車が衝突

先日、取材帰りにクライアントの担当者と二人で最寄り駅まで歩いていると、後ろの方でドスンと何かが衝突する音が聞こえた。普段聞き慣れない音だけに、何かの事故であることは明らかだった。二人で目を合わせて、おそるおそる来た道を戻ってみると、自転車の女子高生とスクーターの高齢者男性が向かい合って転んでいた。

どちらも大した怪我はないことはすぐに確認できたけど、女子高生の自転車は前方のフレームが曲がっているようにも見える。そして、状況がよく飲み込めずにこちらが気後れしているうちに当事者の女子高生がすっと立ち上がり、相手の男性のもとに近づいて「大丈夫ですか?」と声をかける。若者なら普通なら自分のことを優先しそうだが、その冷静さに感心しつつ、彼女がスクーターを起こそうとしたところで僕らも近くに駆け寄った。



当事者以外に近くにいたのは、僕ら2人と僕らとは別の方向から来た女性の3人だけ。女性の方は衝突の瞬間を見ていたらしい。二人の状態を確認すると、どちらも「大丈夫」と言う。とにかく怪我がなくて良かった…と肩の力が抜けた。それでも交通事故は後になってから症状が出ることもあるので「念のために病院へ行きましょう」と僕たちは声をかけた。しかし、やや気が動転している男性の方は「俺は30分後に行かなきゃならないところがある。本当に大丈夫だから」と言ってスクーターのハンドルを握り、この場を去ろうとしている。

おいおい、ちょっと待て…。あんたが良くても相手がいるだろ。

本人は「前に転んだ時の傷だ」というが、転んだ側のミラーはへし曲がり、ボディも激しく擦れている。スクーターで自転車にぶつかっておいて、何ごとも無かったように立ち去るのはいかがなものか。結局、我々の方で警察と連絡を取り、しばらくしてやってきた巡査にその後を委ねた。当事者の二人だけだったら男性が逃げてしまったかもしれないが、目撃者の女性がいたことが何よりの救いだった。

増え続ける自転車の危険運転

そんな事故に遭遇した一方で、最近は自転車のマナー悪化が気になる。うちの近所は最寄り駅までやや遠く、南北の交通の便があまり良くないので自転車で移動する人が多い。そして、そうした土地柄からか最近ではウーバーイーツの配達員も増え、自転車の交通量が非常に多くなってきている。

これは偏見かもしれないが、自分で自転車を所有している人の多くは都内の交通マナーを学んでから乗り始めていると思うけれど、シェアバイクユーザーなどの非所有者は自転車の安全意識が比較的低いように思う。歩道を猛スピードで進むなど歩行者との衝突の危険も気になる上、狭い道を走っている時に強引に追い越してきたり、登り優先の坂道を上から避けずに突っ込んできたり、左側通行を守っていなかったり、同じ自転車乗りからしても危険を感じることは多い。さらにスマホを見ながら走るなどのマナー違反は“論外”である。

とりわけ近年増えた“ドコモの赤チャリ”は軽く踏み込めば簡単に力が出る電動自転車なので、特に裁量制で働くウーバーイーツの配達員の中には横暴な走り方の人が多いというのが僕の肌感で、「便利さ」の方ばかりが先に立って安全面への心がけが希薄になっているように感じる。そもそも一人(もしくは一組)の人間のメシを運ぶために、何人もの人が迷惑を被るというのは、何だか滑稽な話なのだが…。

実は、今日も朝のウォーキング中に“スマホ乗り”の少年に追突されそうになったばかり。車輪の音が背中に聞こえて後ろを振り向くと、スマホを見ながら走ってくる少年が僕の目前で顔を上げて驚くように避けていく。驚きたいのはこちらの方で、社会的責任の取れる成人ならまだしも、子供にぶつかられて怪我を負ったらたまったもんじゃない。しかし、その一方で、もしここで事故に遭ったとして、先日の事故のように冷静に対処できるだろうかとも思った。あの男性のように気が動転しているうちに、車じゃなくて自転車だからとか、子供だから仕方ないだろうとか、そんなことを考えて相手を無罪放免にしてしまう可能性もありえるな、と。



そこで、自転車事故に遭った際の初動について調べてみたところ、こちらの記事を読んだところ、やはり自動車事故と同じで、怪我の確認を最優先に行った後に警察に連絡するとある。そして、その後は当事者同士で示談交渉を行うケースが多いそうだが、自転車には車と違って自賠責保険がなく、任意保険に加入している人も少ない。よって、民事調停や裁判に発展することもあるそうだ。

自転車も車と同じで使い方を誤れば「凶器」になる。そして弱者優先のルールに乗っ取れば、自転車のせいで歩行者が迷惑を被るのは健全とは言えない。僕自身も自転車の迷惑運転を不快に思うことは日常茶飯事だが、他人のマナー違反を正すよりも自分自身が事故を起こさないことの方が大切だ。いま一度、気を引き締めたい。

【about me…】

鈴木 翔

静岡県生まれ。東京都中央区在住。<br>出版社や編プロに務めた後に独立。旅好きでこれまでに取材含めて40カ国以上に渡航歴あり。国際問題からサブカルまで幅広く守備範囲にしています。現在は雑誌、実用書などの紙媒体での編集・執筆だけでなく、WEBライターとしても様々な媒体に関わっています。ジャンルは、旅、交通、おでかけ、エンタメ、芸術、ビジネス、経済など様々。これまでの経験値から「たとえわかりにくいものでもわかりやすく」伝えることがモットーです。

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