仕事メールの終わりに「よろしくお願い申し上げます」と書くのをやめました

自分が正しいと思ってやっていることを周りの風潮に流されて変えるのは好きではない。たぶんそれは自分の信念がある人ならば、みんな同じだと思う。今日はそんな気持ちが折れた話。

会社員の頃から仕事のメールの最後には「何卒よろしくお願い申し上げます」という文言を付けてきたが、最近それをやめて「よろしくお願いします」に替えた。メールを受ける相手は誰も気づかないことかもしれないが、本人の心情的にはこれは結構大きなことだったりする。

きっかけは、仕事の都合で訪れた南青山の岡本太郎記念館で岡本太郎氏がデザインした「座ることを拒否する椅子」というものを見たことだった。

座ることを拒否する椅子……、それって椅子なのか椅子じゃないのか、笑。



腰をかける部分に岡本太郎独特の「目」がデザインされた“椅子”は、それが椅子だと説明されなければオブジェのひとつだと思ってしまう。

なぜ岡本太郎はこうした椅子を作ったのか。それは「椅子というのは座りやすい形をしているが、それは人間に媚びている」からなんだそうだ。なるほど、その考え方は面白い。

そして、それは同時に近ごろ感じていた「何卒よろしくお願い申し上げます」という言葉に対する違和感の答えになる気がした。

一人で仕事をしていると、時には理不尽な要望やリスペクトのないメールをもらうことがある。もちろんそれを上手く咀嚼して気持ちを落ち着けていくのが大人というものだが、なかには、そこまでの関係値でもないのに、文頭に「お世話になっております」がなかったり、文末に「よろしくお願いします」がない人もいる。ひどい時は最初に宛名すらないことも。

そういう人は、たぶん一部の“進歩的文化人”のような人々の考えに毒されているのだろうけど、相手が文頭・文末の礼儀を重んじているならば、それに合わせるのがリスペクトというものだ。コミュニケーションというのは一人で成り立つものではなく、必ず相手がいるものだから。

対して、こちらはそういうメールにも「何卒よろしくお願い申し上げます」を付けて返事を返すのだが、そこには長らく違和感を感じてきた。

よくクリエイターに対して「好きでやっているんだろう」とこの職業を遊びの延長のように考えている人がいるけれど、同じ創作でも「仕事は仕事」で「遊びは遊び」である。仕事でやることにおいては、報酬の代わりに成果物という対価を渡しているので、それは遊びではなくビジネスだ。そこではクライアントとクリエイターは「パトロンと芸術家」の関係ではなく、対等な「ビジネスパートナー」の関係であるべきだと僕は考えている。

こちらはお願い「申し上げ」て、おまけに「何卒」まで付けているのに、相手からは「お願いします」の一言も返ってこない。穿った見方をすれば、無意識のうちにマウンティングを取られているような気分がしなくもない。

ただ、これって相手のリスペクトの欠如でもありつつ、こちらの構え方のせいでもあるんだなと。

つまり僕自身が「座ることを拒否する椅子」になってしまっていて、自分から「何卒よろしくお願い申し上げます」なんて相手に遜った言葉を言うことで、相手に媚びた気持ちを自然と与えているんじゃないかと。

企業の中でフリーランスみたいな働き方への理解はまだまだ成熟しているとは言い難い。よって、相手に無駄な勘違いを与えないためにも自分から遜りすぎるのはやめた。ちゃんとしたメールをくれる相手にも「よろしくお願いします」くらいの表現で抑えることにしている。

もちろんお仕事している方々のほとんどはリスペクトを持っていてくれているのでごく一部に対しての話だが、個人でやっていると、そのあたりの構え方ってとても大切だと思う。おわり



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