僕が育った地区にあった「ウチに入れるの○人まで」という謎ルール

先日、いつもオウンドメディアの仕事をいただいているクライアントが緊急事態明けに久々の一般向けイベントをするというので、せっかくだから「取材に入りましょうか?」と提案をした。

ところが、先方からはにべもなくNOの返事。理由は「一般の参加者が満員だから取材を入れられない」とのことだった。いやぁ、屋外でやることだし、そもそも“身内”と一般参加者は別カウントでしょう…と思ったが、事を荒立てるところでもないから口を塞いだ。すると、向こうは「次やる時に空きがあったら来て欲しい」と言ってきたので、思いやりで提案した話なのに変に選別されている感じがして、それならば「そこまでこだわりませぬ」とやんわり返しておいた。



提案が却下されることなんて日常茶飯事だし、それも仕事の一部なので何とも思わないが、なぜか今回だけは痒い気持ちが残っている。それはなぜかと自転車を転がしながら考えていたら、あぁ、アレのせいか…と、昔のある記憶が蘇ってきた。

子供時代、人気のバロメーターは…

子どもの頃、僕の生まれた地域は周りに自然しかないような山間部だったが、そんな場所でも遊びといえば既にテレビゲームが主流になりつつあった。80年代前半生まれの僕たちはスーパーファミコン世代である。いわゆる“スーファミ”が発売されたのは、僕が小学校低学年の頃。そして“ストⅡ”の発売と同時に我が家にもスーファミがやってきた。今も変わらないと思うが、当時、ゲーム機は一家に一機が当たり前。やはりマジョリティはスーファミ派で、その中に一人だけメガドライブを持っている子がいた。

もちろん家にゲーム機が無い子もいて、そういう子はテレビゲームやりたさに友だちの家へ遊びに行く。「〇〇くん、あーそーぼ」と友だちの家にアポ無しで行っても、その心の内にあるのは「ゲームやらせて」という下心なのである。

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ただ、たとえ家に入れてもらえても何で遊ぶかはその家の子に主導権がある。よって、ゲーム目的で来た子は一向にゲームを始めようとしないと、じれったくてモジモジしはじめる。そして、ずっとその時間が続くと我慢の限界を突破し、ついに「ねぇ、ゲームやろっか」と本心が表に出たりする。そういう子の姿を見て、僕は「遠慮は悪だ」という人生のヒントを得たとか得ないとか。笑

だからこそ、友人間の人気は見た目でも人望でも優しさでもなく、人気のゲームカセットをいくつ持っているかにかかってくる。いいカセットを持っている子の家には、いつも子供が群がる。少なくとも僕が生まれた地域はそんなところだった。

友だちの家に入れてもらえない理由に愕然

近所の子と遊ぶ時は通学中の道なんかでだいたい先に約束をしている。ただ、約束なしで誰かと遊びたくなった時は、とりあえず近所を走りながら“フリー”で遊べる子を探すことになる。そうするとゲーム機のある家から何人かの遊び声が聞こえてくる。我が家にはスーファミがあったのでゲームで遊びたいという目的はなかったが、楽しそうなので僕も混ぜてもらおうと玄関で「〇〇くん、あーそーぼ」と呼んでみる。

しばらくして、その家の子が玄関に出てくる。中からの声を聞けば、どの子がいるかもよく分かる。僕はもう一度「あそべる?」と聞く。すると…

 「ウチ、3人までしか入れちゃイカンって言われてるもんで今日はダメ」 

と断ってくる。

 は? なんすか、その意味不明な人数制限は? 

決して僕が嫌われていたというわけではなく、当時はそういう謎ルールがよくあった。ルールを破って一人でも多く家にいれてしまうと際限無しに子どもが集まってしまうから、どこかで人数を切らなければならない。そんな理屈は分かる。ただ、断られた子どもからしてみると、自分が拒絶されたような気分になり、ゲームで遊ぶ子らがワイワイと騒ぐ声を背にしながら、とぼとぼトンボ帰りしたものだ。

なお、その「3人」の中には必ずといっていいほど、ゲーム機を持っていないのに威張る方は達者なガキ大将がいた(なお、ゲーム機と威張ることには何の関連性もない、笑)。彼はその日に誰の家に行けばゲームで遊べるかを熟知していた。結局僕は、そんな閉鎖的な環境に馴染めず、だんだんと近所の子たちとは疎遠になっていった。そして、その後、生まれた地区から引っ越すことになり、彼らとは完全に関係が切れた。



今の子どもたちはスマホで簡単に連絡が取れるし、離れた場所でも同じゲームができる。そもそもみんなでゲームをするにしても携帯ゲームがあるから、わざわざ家に集まる必要がない。だから家に直接行って断られるような悲惨なケースはなかなかないだろう。きっと昭和だからこそのエピソードだ。

なお、引っ越してから10年以上が経った後のこと。連休中の深夜、たまたま地元のコンビニに立ち寄った。僕ら以外の他に客がいない深夜のコンビニでは、自分と同い年くらいのロン毛店員がワンオペで働いていた。そしてレジ打ちを待つ間「愛想もないし打つのもおっそいなぁ…」と心の中でつぶやきながら、ふと店員の名札を見た。すると、それはなんと、あのゲーム機大好きガキ大将だった。子どもの頃のゲーム機への渇望がそうさせたのか、その風貌からはかつて威張っていた頃の面影はなく、明らかなヲ〇ク臭が漂っていた。向こうが僕に気付いたかどうかは分からないが、昔を懐かしむどころか挨拶もすることなく、さながらBダッシュで逃げるようにその場を立ち去った。Game over

【about me…】

鈴木 翔

静岡県生まれ。東京都中央区在住。出版社や編プロに務めた後に独立。旅好きでこれまでに取材含めて40カ国以上に渡航歴あり。国際問題からサブカルまで幅広く守備範囲にしています。現在は雑誌、実用書などの紙媒体での編集・執筆だけでなく、WEBライターとしても様々な媒体に関わっています。ジャンルは、旅、交通、おでかけ、エンタメ、芸術、ビジネス、経済など様々。これまでの経験から「わかりにくいものでもわかりやすく」伝えることがモットーです。

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