ライターという職業は、お惣菜の唐揚げみたいなものだ
新しい仕事の始まりは…
フリーランスになってからというもの、僕は編集的な仕事もライター的な仕事も「新しい仕事の始まりは仕事の終わりの始まり」だと思ってきた。決して消極的なことを言っているわけではない。個人としてやっている上ではどんな仕事もいずれ終わりが来るのは当然のことだ。
今では終身雇用なんて言葉は前時代的になりつつあるのかもしれないけれど、会社に守られて月々決まった働きをして決まった収入がある人々に比べたら、一つの仕事におけるライフサイクルは圧倒的に短い。まぁ、始まりが終わりの始まりというのは、人の一生をはじめとして世の中のあらゆることにもあてはまることかもしれないけれど。
その上で、ライターという仕事はスーパーなんかに置かれている「お惣菜の唐揚げ」みたいなものだと感じさせられることは多い。何をエキセントリックなことを…と思う人もいるだろうけど、最後まで読んでみてください(笑)。
ライターという仕事は専門資格がないゆえに参入障壁が低く、新しい人が次々と生まれ来る業界である。入ってくる数が多ければ、古くなっていくスピードも速い。例えばそれはプロ野球の世界なんかと似ているかもしれない。若くてまだ花の咲かないプロ2年目、3年目の「元・期待の新人」よりも、その年に入ってきたばかりの黄金ルーキーの方が、実力を比較しなくとも遥かに期待値が高く見える。
だからこそお客様に飽きられないためには、小さな一歩でもいいから常に新しいものを取り入れていかなければならない。それは見せ方の変化だったりもするし、新しい言葉をひとつ使ってみることだったりもする。ある意味で現状の否定であって自己の破壊でもある。自分では新しいと感じていたことも、時が立てば当たり前になるし、知らず知らず周りに模倣されていく。現状維持に甘んじることなく、表面的でもいいから常にフレッシュな自分を見せておく必要がある。
永遠に変化が必要な「惣菜の唐揚げ」
それはスーパーに並ぶ唐揚げも同じだ。どんなにおいしい唐揚げであってもいつまでも同じ味付けだとリピーターに飽きられる。家の近くに他のお肉屋さんができて、そこがちょっと凝った唐揚げを出していれば、常連ですらそちらに走る。そして新しい方がそこそこのレベルなら、お客さんが唐揚げを買う選択肢が1から2に増えてしまう。結果的に100%だったお客さんのシェアが50%に減る。
離れそうなお客さんを繋ぎ止めるためには、自分のところの唐揚げを変えていく必要がある。衣の粉の割合を変えてみたり、調味料に流行りの調味料なんかを加えてみたり、タレで味付けしてみたり、あるいはフライヤーを変えたりと、定期的に「さらにおいしくなりました!」という文句が謳えるものを用意していかないと飽きられる。選択肢が2から1に戻らなくても、座して死を待つよりもマシだ。
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ただ、その変わった姿は、周りに対して相対的評価でおいしい唐揚げであり続けても、絶対的評価では本当においしい唐揚げであるかはわからない。もしかしたら一番最初の唐揚げが一番おいしいのかもしれない。味を変えすぎて「昔の方が良かったわね」と言われてしまうのは本末転倒だ。
だから、衣を変えたとしてもベースの鶏肉なんかは変えてはならないとも思う。基本を忘れることで、もともと手に入れたものを失うこともある。もちろん衣をおいしくするのと同時に鶏肉の方もおいしくしていかなければならないが、それはもっと根本的な部分の改善で、小手先で変えるところではない。
とはいえ、言葉だけで斬新さとか自己破壊感なんてものを見せていくのは難しい。だから、見た目やパフォーマンスではなく言葉とアイデアを本質に戦っていきたい僕としては、このややヘンテコなブログが、自分を開放して頭をグルグルと回すラボのようなものだと思っている。
いろいろやり方はあるけれど、とりあえず売れ残りの唐揚げにならないように気をつけたい。
【about me…】
鈴木 翔
静岡県生まれ。東京都中央区在住。出版社や編プロに務めた後に独立。旅好きでこれまでに取材含めて40カ国以上に渡航歴あり。国際問題からサブカルまで幅広く守備範囲にしています。現在は雑誌、実用書などの紙媒体での編集・執筆だけでなく、WEBライターとしても様々な媒体に関わっています。ジャンルは、旅、交通、おでかけ、エンタメ、芸術、ビジネス、経済などノンジャンルでありオールジャンル。これまでの経験から「わかりにくいものでもわかりやすく」伝えることがモットーです。