家系のカウンター席で考えさせられたラーメンデートでの彼氏の振る舞いについて
家系ラーメン店にて
ひとり行動が多いと「群れ」の中に独りポツンと置かれる場面が少なくない。先日もこんなことがあった。
新橋でいつも行列を作っている横浜家系ラーメンの店に入ったところ、カウンター席しかないその店で、選ぶ余地なく左右をカップルに挟まれる席に座ることになった。無論、こういう店でそういう展開になることには何の不満もない。
左側はヲタク系カップル、右側は今風カップル。両手を広げたら隣に触れてしまいそうな狭~いカウンター席である。ああ、家系ラーメンって平日は男性客ばかりだし、どこか女性を受け付けないイメージがあるから、デートで来るっていうのは彼女にとってはうれしいのかな…なんて要らない想像が脳裏をよぎる。
両サイドで会話に花が咲く中、置き物のようにポツンと座っている孤独なおじさん。目のやり場もないのでスマホをいじる…つもりが、どうしても両側の様子が気になってしまう。
とりあえず驚きだったのは、今風カップルの彼氏の服装だった。サイドを刈り上げた今風の髪型に、今風っぽいヒゲ。まぁ、そんなことはどうでもいい。問題は上半身の服装だった。今風の白のロングTシャツ1枚のみ。上着もはおっていない。
おい青年よ、ここは家系ラーメンの店だぞ。
白Tの前に家系ラーメンなんて自分の方からスープに「飛んできてください」と言っているようなものだ。背脂混じりのシミなんて洗濯してもなかなか消えないし、この後もどこかに出かけるならシミのついたTシャツはちょっと恥ずかしい。果たして彼はそんなことはまったく気にしない心の広い男なのか。それとも自分はTシャツにスープを飛ばさないという絶対の自信があってこその行動か。いずれにしても見ているこちらの方がハラハラしてしまうぞ。
すると、我々がラーメンを待つ間、行列を整理していた店員が彼の真後ろを通りながらこう言った。
入り口に紙エプロンありますんで、必要でしたら使ってくださぁい!
おお、紙エプロンがあれば服が汚れる心配はないな。長袖だから腕までは隠せないけれど、背脂リスクは大幅に軽減できる。よし、きっと店員さんも気を利かせて言ってくれたんだろうから使わせてもらうがよい。
【最新ブログ-SUZUKISHO.com】
- 高級傘の所有はNG⁉︎ 風の埋立地・カチドニアこと東京・勝どき
- 銀座でドン引きしてしまったインバウンドの驚愕モラルハザード
- ガチの静岡県民がきっと知らない? 静岡県人あるある
- 【なぜだ⁉】オリジン弁当に寄ったアルフィーのできこと
- LOOPとかドコモの赤い自転車とか、シェアモビリティに対して思うこと
ところが彼はすぐ近くにある紙エプロンを取りに行かない。…というか、紙エプロンがあることを気にする素振りもない。うーむ、こういう時の気持ちって僕には理解できないのだが、紙エプロンって確かにかっこいいものではないし、それはデート中ならなおさらだ。おそらく、そういうことを考えての痩せ我慢だったりするのだろうか。
彼女にカッコ悪く見られるのも堪えられないけど、シミがついた背脂くさい服でこの後のデートを過ごすなんてもっと堪えられない。どちらかのリスクを選ぶなら、僕だったら前者の方がマシだと思った。ともかくラーメン屋に入るのに白Tはおすすめしない。
デートでそのノリはどうなんでしょう
一方で左隣のヲタク系カップルの方である。ちなみに、勝手ながら見た目と彼氏が彼女を呼ぶ時の「あなたがさー」という、どこかヨソヨソしい言葉遣いで勝手にヲタク系カップルと認定させていただいた。
僕より先に着丼(頼んだラーメンが席に届くこと)を迎えた彼ら。やがて僕の方にも注文したものが運ばれてきて、並んでラーメンをすすっていると、先に食べていた彼氏の方が調理場に向かって、
すぃいませーん、ライス、並でお願いしまっす!!!
と大声で言う。
家系ラーメン店には「ごはん無料」の店が少なくない。よって「ご飯ください」は、ごく普通のコミュニケーションである。そして、得てしてこういうお願いは大声で発しないと店員の耳に届かない。だがしかし、この時の彼の言い方は“大食いの男子学生が一人でおかわりを頼む時のノリ”そのものであった。
この手の店にめったに来ない彼女からしてみたら、隣でいきなり彼氏が「すぃいませーん、ライス、並でお願いしまっす!!!」っていうのは、一種のカルチャーショックだったと推測する。何となく彼女の表情から小っ恥ずかしいオーラが伝わってくる。
かつては「僕は死にましぇーん」(101回目のプロポーズ)とか、「助けてください、助けてください」(世界の中心で愛を叫ぶ)とか、恋愛ドラマ史に残るような“名叫び”がいくつかあったけど、さすがに「すぃいませーん、ライス、並でお願いしまっす!!!」という文句はカッコいいとは思えない。
さらに食べ終わって出ていく際に、これまた彼が大声で、
「っちそうっさまでしたー」
(※注・ごちそうさまでした)
と言う。これも学生ノリのそれだった。彼氏にこう言われてしまうと、女子も何も言わないわけにはいかない。だって、何も言わないと彼氏に「礼儀を知らない人」と思われかねないから。そういうわけで、彼女も、
「ごちそぅさまでしたぁ」
と小声で言う。もちろん家庭でも外食でも「ごちそうさまでした」を言うのは大切な礼儀であるが、
「っちそうっさまでしたー」
と叫ぶように言うのは、ラーメン屋か昔ながらの定食屋くらいであろう。これはこれで一緒にいる女性に対するデリカシーがないと感じてしまった。「郷に入っては郷に従う」というのは大切な心がけかもしれないが、「郷に連れていって郷に従わせる」のはなかなか紳士的な行動ではないなと。
カッコつける彼氏とデリカシーのない彼氏。両極端なカップルを見ながら、ラーメンデートというものにいろいろ考えさせられてしまった、ちょっとは女心のわかるおじさんであった。
【about me…】
鈴木 翔
静岡県生まれ。東京都中央区在住。出版社や編プロに務めた後に独立。旅好きでこれまでに取材含めて40カ国以上に渡航歴あり。国際問題からサブカルまで幅広く守備範囲にしています。現在は雑誌、実用書などの紙媒体での編集・執筆だけでなく、WEBライターとしても様々な媒体に関わっています。ジャンルは、旅、交通、おでかけ、エンタメ、芸術、ビジネス、経済などノンジャンルでありオールジャンル。これまでの経験から「わかりにくいものでもわかりやすく」伝えることがモットーです。