「スマホ認知症」よりも、個人的に問題だと思うのは「スマホ閉鎖民」の方

昔は写ルンです、今はスマホ

世間のトピックはツイッターから得ているワシ。今日は「スマホ認知症」なる言葉が話題になっていた。

その物忘れ「スマホ認知症」かも 30~50代で急増中」なる元記事によると、過剰なスマホ依存によって、高齢者以外でも「人や物の名前が出てこなくなった」「簡単な計算さえできなくなった」など、日常的に深刻な物忘れの症状が出るケースが増えているらしい。



そこにはスマホ認知症のチェックリストも掲載されていたが、僕なりの解釈では「頭で考えるより早くスマホに頼ってしまう」ことが脳機能に障害を与えるようだ。しかしながら、そう言ってしまうと、今や世の中のほぼすべての人がスマホ認知症の患者もしくは予備軍ではなかろうか。

例えば、たくさんの人が行き交う街の風景を眺めた時、あなたの目には何台のスマホが映り込むだろうか。

新聞のような情報媒体の役割がスマホに移り変わり、カメラなぞ持ったこと無い人でも何か気になるものを見つければスマホを取り出して写真に残し、見忘れたテレビ番組もスマホアプリの後追い配信で見ることができ、スマホゲームは暇つぶしの格好の手段で、日用品を買い忘れていたらスマホでネットショップで買えば翌日には自宅に届き、ちょっと時間を確認したい時にもスマホを開く。老若男女に関わらず、とにかくあらゆる活動がスマホ一台の中にリプレイスしているのだから、街の中がそういう景色になるのも仕方がない。

やめた方がいいと啓蒙されても、人間という生き物は便利な方向に流される動物だから、スマホより便利なものがでてこない限り、さらに強い傾向になっていくだろう。

ちなみに僕は以前から、人間が集まる場所で、どこもかしこもズラーっとスマホの画面をのぞいている風景を奇妙に感じていて、公共交通や待合室のような場所では、必要ある時以外はスマホを出さないように心がけている。

でも、無情な言い方かもしれないが、他人に迷惑をかけず、自分の能力が下がっていくだけならば、それは個人の選択の末路じゃなかろうか。何かを得れば何かを失うのは世の中の常で、それで言えば読者もギターもアウトドアも同じ。表面的に健康的に見えるものも人間の脳にどういう影響を及ぼしているかは正直わからない。他人に迷惑さえかけなければ、あとは自由ではなかろうか。

無論、仕事上の物忘れなんかは周囲にも迷惑をかけるものだ。ただ、ゲームとかマンガとか、サブカルチャーであれば「ゲームのやりすぎだ!」とか言って説教できるところだが、誰もが持ってるスマホとなるとそうは言えない。「あなたはスマホでYouTubeとかアプリゲームとか、まったくやらないんですか?」と言い返されたら、こちらが返す言葉に窮するだろう。そうなると、明確な判断理由のないスマホ認知症は「物覚えが悪い人」という個人能力への評価に集約される。スマホ認知症と個人の評価がトレードオフになるなら、長い目で見れば問題はない。


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一方で、同じスマホ関連の問題というと、最近、特に迷惑と感じるのは「スマホ閉鎖民」の増加だ。

徒歩で、あるいは自転車で街を移動している時、前の方にフラフラと歩いている人がいる。周りのスピードに合わせないところから、手元を見るとやはりスマホをいじっている。

これだけでも危ないのだが、耳を見るとワイヤレスイヤフォンを付けている。こうなると音でも周りの流れに合わせて動けなければ、救急車などが通る際も簡単に気付かない。僕のような自転車の場合、やむなくベルを鳴らすようなケースでも気づいてくれない。

いわば自らの意思で視覚と聴覚を失い、五感を閉鎖した状態で歩いている。

僕はこういう人のことを「スマホ閉鎖民」と呼ぶ。



駅や公共施設なんかに行くと「やめよう、スマホ歩き」とか「STOP!ながらスマホ」なんて書かれたポスターが貼られているが、いまや歩行者のモラルハザードは「スマホ歩き」とか「ながらスマホ」とかのレベルを超えている。こうしたスマホ閉鎖民と階段や交差点のような場所で不意にぶつかって怪我をされても、ぶつかってしまった側も随分と不憫だ。

マイカー所有者なのか、バイカーなのか、歩行者なのか、交通問題は自分がどのカテゴリーにいるかで捉え方が異なるだろう。「高齢者は免許を返納しろ」とか「危険自転車を取り締まれ」とか。「電動キックボードが増えたら事故が増えるのではないか」とか、それぞれがそれぞれの立場で意見があり、どこかを取り締まれば、そこから別の何処かへの不満が飛び出す。

だから公平的な目を持つことは大事だと思っているが、それでも従前の交通事情がベースにあるからか、とかく自転車ばかりが交通事情の問題点としてクローズアップされることが多いと感じる。もちろん多様化している自転車のマナー向上は喫緊の課題だが、明らかに迷惑を起こしているスマホ閉鎖民なんかも取り締まりの対象にすべきではないかと思ったりするのである。

【about me…】

鈴木 翔

静岡県生まれ。東京都中央区在住。出版社や編プロに務めた後に独立。旅好きでこれまでに取材含めて40カ国以上に渡航歴あり。国際問題からサブカルまで幅広く守備範囲にしています。現在は雑誌、実用書などの紙媒体での編集・執筆だけでなく、WEBライターとしても様々な媒体に関わっています。ジャンルは、旅、交通、おでかけ、エンタメ、芸術、ビジネス、経済などノンジャンルでありオールジャンル。これまでの経験から「わかりにくいものでもわかりやすく」伝えることがモットーです。

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