銀座中心地に100円ショップができたという小さな衝撃


上京してからこれまで、池袋周辺の練馬、新宿周辺の中野、そして銀座周辺の勝どきで暮らし、仕事では渋谷や六本木近辺などで働いてきた。そんな風にいろんな街を見てきたけれど、東京ってそれぞれの街に街の色が確かにある。

例えば、池袋は北関東から見た東京のゲートウェイとして東京にある話題の店が身近に揃う町って印象だし、新宿は商店と飲み屋が雑然と揃っている都民には一番便利な街という印象だ。



そんな中で銀座には、上京した当時から「キラキラとした大人が集まる日本一のブランド街」というイメージがあった。練馬や中野のような山手線の西側に住んでいると、東京駅や銀座がある東側には出かけることは意外とない。だから今の部屋に越してくるまでは、取材で用事がある時以外、ほとんど銀座に来ることはなかった。

そんな高級イメージを抱いていた銀座の中央通りに今から十年以上前、ユニクロの超大型店やH&Mの日本1号店ができたことはちょっとした衝撃だった。何度かヨーロッパを旅していた僕にとっては、H&Mって東欧の田舎にもあるようなカジュアルウェアショップだったから。そしてファストファッションという言葉が流行りになったあの時代が銀座のイメージが揺らぐきっかけだったかもしれない。

@銀座

それから僕が勝どきに越してきた4年くらい前の銀座は、すっかりインバウンド狙いの街に変わっていた。大通り沿いには常に外国人観光客用の大型バスが停車。LAOXのあるビル前の交差点やハナマサのある首都高の高架下あたりはツアーの集合場所になっていて、歩行者が簡単に通り抜けられないような状況ができていた。そんな中で日本人向けの高級ストリートとして日本橋界隈の価値が見直されたような気もする。

その一方でこの十年の間にH&Mも撤退。賃料の高騰が理由とされるが、その後、銀座の別の場所にも出店がないことからすると、銀座の街にファストファッションという新しい色が長くはハマらなかったともいえるだろう。

そして、このコロナ禍に時代が移ると、外国人の入国規制でインバウンド需要がほぼ無くなった。銀座大通りに行っても、毎日がお祭りみたいな、あの外国人観光客の群れは見ない。彼らを狙った外国語表示もめっきり見なくなった。ここ十年の間に行ってきたH&M上陸をきっかけとしたカジュアル化とインバウンドの富裕層狙い。この両方を失った今後の銀座はどう変わっていくんだろうとここ最近考えていたが、そんな最中に銀座中央通り沿いにあるメルサの柱にこんな表示を見かけた。



「ワッツ 銀座2丁目メルサ店 3月18日オープン」

…って、銀座の中心地に100円ショップですか?

コロナ禍でファッション関係が右肩下がりの一方で、室内用品の消費が上がっているのは事実だから100均が増えるのは当たり前だけど、この銀座ど真ん中に100円ショップができるというのは、ある意味で当時の日本では最先端だったH&Mができた時よりも衝撃的だ。

念のため付け加えると、100円ショップをディスってるんじゃなくて、デパ地下でパンひとつ300円するような銀座の街と100円ショップという新しいマッチングに驚いているのだ。

百貨店もデパートも苦しく、アパレル関係はユニクロなんかを除いてほぼ全滅。空き物件もあちこちに見られるようになって、夜の街も時短要請と何となく全体的に元気を失っている今の銀座。GINZA SIXも家ナカ需要に向けた店舗刷新を行っているが、今回の100円ショップのオープンもコロナ禍を受けた銀座の変化の訪れなのだろうか。果たしてどこに向かう、銀座の街よ。

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