長崎・思案橋の夜とニセ福山雅治と爆弾ちゃんぽんと…

こちらは、おなじみリンガーハットのちゃんぽん

ずっと“福山雅治”だった人生初の長崎旅行

最近、リンガーハットでちゃんぽんを食べた。ちゃんぽんといえば、こんなお話が…。

不特定多数の人々とのトークにおいてモノマネというのは、ひとつの武器になる。

話題がない時、あるいは話題が尽きた時。冷めた空気の中でモノマネが自分の身を助けてくれることがある。「自分はモノマネなんかやらないタイプだ」と頑なに思っている人も何かひとつマネできるものを身につけておいた方がいい。

僕も子どもの頃からだいたいのモノマネはやってきた。ビートたけし、マッチ、B’zの稲葉、桑田佳祐、キテレツ大百科の人々(コロちゃん、トンガリ、勉三さん、熊田の親父)など…、いろんな人のモノマネに助けられてきた。



以前、仕事の付き合いで九州を回るツアーに参加したことがあった。参加者はそのツアーで初めて会った人ばかりだ。その中で長崎市を訪れた。

長崎を代表する郷土のスターといえば、台湾の英雄である鄭成功、日本の写真史に残る上野彦馬、そして、チィ兄ちゃんこと福山雅治である。

ベタなモノマネは一通りやってきた僕にとって福山雅治は当然ながらレパートリーのひとつである。残念ながら本人にお会いしたことはないが、福山には、かつて親族の結婚式で彼の曲を歌わせてもらったという恩もある。そんな彼の故郷を初めて訪れたという高揚感から長崎市に入った瞬間、

やっぱり長崎はいいねぇ〜

と福山のマネをして言ったら、これが出会ったばかりの人々の中で、

だいぶウケた

これが僕の中で余計なサービス精神を呼び、そこから長崎市にいる二日間ずっと、

福山マネだけで喋ることになった

三菱の博物館に行っても福山(というか、弥太郎の像の前で彼が演じた坂本龍馬)、グラバー園に行っても福山。周りも福山という体で話を振ってくるからやめられない。

そして日本三大夜景である稲佐山に向かおうとツアーバスに乗っている時である。稲佐山といえば、福山が何度も野外ライブを行っているファンの聖地。ガイドさんが「福山雅治」の名前を出した瞬間、当然ながら周りから福山フリが飛んでくる。

やっぱり稲佐山の夜景が

日本で一番だよねぇ〜

と返す私。我々グループの盛り上がりに反して失笑のバスガイド。

そんな中で彼女の福山ネタは続く。長崎だったらもっと話すネタはいくらでもあろうに、やはりリビングレジェンド的な郷土のスターはすごい。隣の人と話しながらそれを集中せずに聞いていたけど、話の中の「福山さんは長崎に帰ってきたら『爆弾ちゃんぽん』を必ず食べるそうです」という部分だけは何となく記憶に残った。

深夜3時半の思案橋で見つけたのは…

そして稲佐山の夜景を見終えて、その日は長崎駅近くのお高級なホテルに宿泊。食事を終えてから最上階のバーで数人かで食後の談笑。24時まで飲んでいたが、翌日も朝から予定がきっちり組まれているので、そこで解散となった。

しかし、気分はまだまだハイテンションで、さらにこの日はツアー最後の夜ということで明日にそこまで体力を残す必要はない。そういうわけでこのツアーで意気投合した同年代の彼と街へ出ようということになった。

ところが、二人で長崎駅前まで出てみたものの、駅前はチェーン系の居酒屋がポツポツとあるだけで歓楽街的なエリアが見当たらない。そういうわけでタクシーの運転手に飲めるところがないか尋ねると、長崎市内の歓楽街は「思案橋」だという。

シ・エンバシー…大使館か? 既に酔っているので理解力が低下しているが、とりあえずそこに連れて行ってくれとタクシーに乗った。

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そこから適当なバーに入って三次会のスタート。何を話したか今はもう覚えていない。ただ、最初から酔っていた状態で3時間近く飲み続けた。そして時計の針は深夜3時半。もう閉店するからと店を追い出されて、おぼつかない足で思案橋を歩く男が2名。そこでニセ福山(僕)は言った。

長崎に来たからには

飲みの締めは

ちゃんぽんだよねぇ〜

相手の彼も同意して、ちゃんぽんが食べられるような場所を探すのだが、さすがの歓楽街とはいえ、深夜4時近くにちゃんぽんを出すような店は閉まっている。長崎ちゃんぽんのノボリが立っている店をくまなく回ったけれど開いているところはない。もうリンガー○ットでいいから、ちゃんぽん食べられるところあればどこでも入るのに…。

結局、開いている店がないので、諦めて帰ろうかとさっきタクシーを降りた場所に戻ってきたら、道の向こうに灯りのついている中華屋っぽい店が見える。あそこならちゃんぽん食べられるんじゃないか。我々はタクシーを捕まえるのをやめて、その店に向かった。

扉を開けて店に入ると、目に飛び込んできたのは「爆弾ちゃんぽん」の文字だった。

爆弾ちゃんぽんが

あるじゃな~い

反射的に口から福山節が出たが、その時は長崎市では爆弾ちゃんぽんというものがそこら中で食べられると思っていた。きっと、ここもそのうちの一店なんだろうと。

だがしかし、案内された席で店の壁を見ると、大河ドラマの「龍馬伝」に出ていたメインキャストのサインがずらりと飾られている。偶然にもその店「思案橋ラーメン」は、稲佐山に向かうバスの中でガイドが言っていた、福山が愛する爆弾ちゃんぽんの店だったのである。



ところで、何で「バクダン」なのかが気になっていた爆弾ちゃんぽんの正体は、見るからに濃そうなスープとたっぷり野菜の上に大量のニンニクがのっているちゃんぽんのことであった。深夜にこれはなかなかパンチがある。おそらくベーシックな長崎ちゃんぽんにニンニクは御法度なのかもしれないが、これが僕と本場の長崎ちゃんぽんとのファーストコンタクトになった。そして、これが福山雅治の長崎の味が僕にとっても長崎の味になった瞬間である。

やっぱり

爆弾ちゃんぽんは

最高だねぇ〜

と店に言い残して、タクシーでホテルに戻ってきたのは朝5時近く。明日(というか今日)は朝7時過ぎ集合で朝食を食べてから軍艦島に行く予定だったので、寝られるのは実質2時間程度だ。高級ホテルの天国のようなベッドに包まれて、アラームもかけないまま簡単に眠りに落ちた。

そして翌日、奇跡的に目覚めることはできたものの、にんにく臭さをわずかに残した僕らは、軍艦島行きの船上でも船の揺れなのか二日酔いの揺れなのか分からないようなバッドコンディション。そして昼は中華街で名店のちゃんぽんだった。本来ならここがこの旅程で初めての長崎ちゃんぽんのはずで、連れて行ってくれた人も「さぁ、めしあがれ」という顔をしていたが、まだ10時間も経たない少し前に爆弾ちゃんぽんを食べたばかりの僕らにとっては、一口すする前から満腹な一杯だった。そして、額に冷や汗をかきながらそれを食べ終わるまで、ずっと僕の頭の中にはいつしかのオリンピックで何度も聞いた福山のあの曲が流れていた。

追いかけて、ずっと追いかけて、この空の向こう

輝いて、きっと輝いて、風になれるから…

【about me…】

鈴木 翔

静岡県生まれ。東京都中央区在住。出版社や編プロに務めた後に独立。旅好きでこれまでに取材含めて40カ国以上に渡航歴あり。国際問題からサブカルまで幅広く守備範囲にしています。現在は雑誌、実用書などの紙媒体での編集・執筆だけでなく、WEBライターとしても様々な媒体に関わっています。ジャンルは、旅、交通、おでかけ、エンタメ、芸術、ビジネス、経済などノンジャンルでありオールジャンル。これまでの経験から「わかりにくいものでもわかりやすく」伝えることがモットーです。

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