他人にへりくだりすぎておかしくなっている日本語
職業柄もあって言葉には敏感だ。
道端でも誤字脱字とか違和感のある文言を頻繁に見つけてしまう神経質なところがある。他人の間違いを見逃さないという悪い性格だ。
そんな中、先日、ある件について某大手小売企業の問い合わせ窓口にメールをしたところ、翌日に返事があった。件名にはこうあった。
「お客様へのご返事」
おやや? その文言にアレルジックな反応を示してしまう私。
きっと過半数の人が違和感なく感じる文言だろう。
しかし、どこがおかしいかと言えば、「お客様」は相手を敬う言葉だから当然として、「返事」は自分から発するものなのだから、「お返事」もしくは「ご返事」では自らを敬っているように感じるのである。
丁寧に見えるようでいて、その割に中身は機械が書いたような無機質な文章だったりするので、きっと定型フォーマットを使って、問い合わせがあるたび、深い意味を考えぬまま、自らを敬い続けているのだろう。
こういう場合、
「お客様からのお問い合わせにつきまして」
くらいの件名がしっくりくるのではなかろうか。
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なお、この仕事をしていると、よく使う似た言葉に「ご紹介」や「ご案内」がある。
ガイド記事などでよく見る「ご紹介しましょう」「ご案内します」などの例だ。
当たり前のように見るので、感覚が麻痺して普通になってしまっているが、これも「紹介」や「案内」は自分からやっていることなのだから「ご」が付くところに違和感を覚える。
仮に「紹介」という行為を相手に差し上げる…というニュアンスであれば、
「紹介いたします」
という文言が適切だろう。
若い人が自己紹介の時に使うのをよく見る「〇〇〇〇をさせていただいている」みたいな言葉もしかり、へりくだりすぎておかしくなっている日本語は奇妙に映るのである。
【about me…】
鈴木 翔
静岡県生まれ。東京都中央区在住。出版社や編プロに務めた後に独立。旅好きでこれまでに取材含めて40カ国以上に渡航歴あり。国際問題からサブカルまで幅広く守備範囲にしています。現在は雑誌、実用書などの紙媒体での編集・執筆だけでなく、WEBライターとしても様々な媒体に関わっています。ジャンルは、旅、交通、おでかけ、エンタメ、芸術、ビジネス、経済などノンジャンルでありオールジャンル。これまでの経験から「わかりにくいものでもわかりやすく」伝えることがモットーです。