日本のサービス品質やカスハラ被害について僕なりの感想


高すぎる日本のサービス品質

最近あるフォロワーさんのつぶやきを見たら「日本はファミレスみたいにエコノミークラスの店でも、客が高いサービス品質を求めてくるから大変だ」みたいなことが書かれていた。

すごくわかる。日本は確かに「おもてなし」の国なんて言われるけど、対価に対するサービス品質の格差が少ない国と感じることは多い。最近では客(カスタマー)が店員にハラスメント的行為を行う「カスハラ被害」なんて言葉も生まれている。

例えばホテル産業もそう。日本は1つ星から5つ星のホテルの間に、旅館やビジネスホテル、カプセルホテルといった業態のある豊かな宿泊文化を持つ国だと思う。ロンドンでもニューヨークでも大都市でそこそこのクラスのホテルに泊まろうとすると最低でも1万円以上は覚悟しなければならないが、日本は東京でもバス・トイレ付きの個室に5000円台で泊まることができる。

何より日本のホテルが優れているのは、低価格が売りのビジネスホテルであっても「お客様が一番」と(たとえ表向きだけでも)真摯に対応する応対品質の高さだ。たった一泊数千円で、フロントに制服を着たスタッフが立ち、「いらっしゃいませ」と笑顔で客を出迎え、部屋も手入れが行き届き、清潔さが徹底された宿は、ある程度の経済レベルの国では見当たらないだろう。

僕はかつて出張で北欧の国々を一か月間かけて回ったことがある。北欧は総じて物価が高いので、デンマークの首都のコペンハーゲンでも最低ランクのホテルで1泊1万円程度。宿の数が少ない地方に行くと、同等のホテルで1泊2万円程度するところもあった。それでも安い宿は早めに予約しておかないと簡単に部屋が埋まる。予約を忘れた結果、1泊3万円以上の宿しか残っておらず、出張なのに野宿したという経験もある。

ある街で泊まった宿は1泊1万5000円もするのに何と宿の中にスタッフがいない。入り口にテレビ電話があって、鍵も保管庫の中から自分で取れという。おまけにスタッフの勤務時間の都合でチェックインは18時までとか、夜間はオートロックで入口が締まるから遅く帰ってくる時はああしろこうしろといろいろ制約が多い。これだけの対価を払っていれば、日本のホテルなら3つ星クラスの重要なゲストとして手厚いおもてなしを受けられるはずだとその時は思った。

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ただ、モラルハザードなんて言葉が叫ばれ始めて久しい昨今。その伝統的なおもてなし文化が良いかと聞かれたら、必ずしもそうとも言えなくなってきていると思うこともある。

日本はサービス水準が高い分、消費者の要求するレベルも高い。それは転じて、消費者の中に高い「お客様意識」を生んでいる。そこには大いに勘違いもはらんでいて、お金さえ払えば「自分は客だから少々の我がままを言っても構わない」と思い込んでしまう人々が一定数いることは否めない。タクシーの運転手と揉めたり、コンビニの店員にイチャモンをつけたりするのはその最たる例といえるだろう。

日本らしいサービス品質とは

僕たちの仕事も同じようなところがある。時給換算したら高校生のバイト代にも満たないような制作料の仕事の割に意識は高い仕事に対して、相手の要求を聞いているうちに「あれ、何で、こんなペコペコしてるんだろう」って思ったことは、僕と同じ自営業やフリーランスの境遇なら一度くらいは経験があるのではないだろうか。もちろん今の私はいいお客さんに恵まれていますが(笑)。

あえて言うまでもなく日本は少子高齢化の時代を迎えている。現役世代が減れば必然と人の手がかかるサービスの品質を下げなければならない。サービスの品質を上げながら価格を下げていくのもなかなか難しい。サービス競争を突き詰めていけば行き着いた先に今度は価格競争が待っている。このあたりをどのように変えていくかは将来を占う問題でもあると感じる。



某団体が「日本のサービス業の労働生産性はアメリカの約5割」という発表をしているが、そこには極めて日本らしいお金や数値に換算できない価値も含まれていることだろう。効率だけを突き詰めればいいというわけではないし、だからといって非効率を野放しにしていいというわけでもない。もしかしたら技術の力を借りれば人が減ってもサービス品質を維持できるかもしれない。いろんな未来が描けるけれど、日本らしさは残していって欲しい。

【about me…】

鈴木 翔

静岡県生まれ。東京都中央区在住。出版社や編プロに務めた後に独立。旅好きでこれまでに取材含めて40カ国以上に渡航歴あり。国際問題からサブカルまで幅広く守備範囲にしています。現在は雑誌、実用書などの紙媒体での編集・執筆だけでなく、WEBライターとしても様々な媒体に関わっています。ジャンルは、旅、交通、おでかけ、エンタメ、芸術、ビジネス、経済などノンジャンルでありオールジャンル。これまでの経験から「わかりにくいものでもわかりやすく」伝えることがモットーです。

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