迷惑な満員電車内での通話。そしてコワモテおじさんの怯えた目に感じたこと

おじさんというのは何かと傲慢だと思われがちだが、ちゃんと自分のことを自覚しながら生きている人もたくさんいる。

昨日、新橋駅から山手線に乗った。扉近くの席に腰掛けると、向かい側の席には上野のアメ横辺りで売っていそうなイカツイ服装で固めた“悪役顔”のおじさんが座っていた。体格は丸っこく年齢はアラフィフくらいか。

一方で、おじさんの横の扉のそばにはリュックサックを背負ったスーツ姿の男性が立っている。おそらくアラサー世代のサラリーマンか。やや長髪で中肉中背。まるでスナック菓子みないなクセのない顔だ。



もしもこの二人を映画のポスターに並べるとしたら、十中八九、アラサー男性が善玉でおじさんが悪玉という構図になるに違いない。チンピラのおじさんに脅されるおどおどしたアラサーというシナリオが僕にでも容易に描ける。

おじさんがスマホをいじっているのに対して、アラサーは窓の方にむきながらクライアントらしき相手と電話で話している。

従来はオフィスにいるのが当たり前だった人もそうではなくなった昨今。このあたりのモラルはとても微妙だ。電車内の通話は100%NGという人もいれば、扉の近くで立ってならばいいのではないかという人もいる。特に仕事の電話だったら仕方ないんじゃないかという人もいるだろう。

ただ、このケースの場合、おそらくアラサーは僕が乗る前から10分以上は通話を続けている。

会話のペースも喫緊の雰囲気ではなく、雑談混じりのゆるい感じだ。公共の場での電話の声というのは本人が思っている以上に大きくなるので、相手も内容もわからない会話がズラズラと続き、少なからず周りに不快な思いをさせている。もし僕がこのアラサーならば、必要最低限のことだけを伝えてそれ以上の会話が必要なら目的の駅まで行ってかけ直すか、一旦途中の駅で降りてホームで話すだろう。

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すると、アラサーのすぐ横にいるおじさんが両手に持っているスマホから目を外し、アラサーの方をギラっと睨んだ。アラサーは扉の方を向いているから、おじさんの視線を感じていない。悪者顔のトレードマークというべきおじさんの目の下のクマがプルプルと怒りに震えているのがこちらからもよくわかる。

アラサーは気付いていないが、この瞬間に彼は“組織のターゲット”になった。きっと、これから僕が目撃することになるのは、Vシネなんかでよく見るバイオレンスな光景に違いない。そして、おじさんがアラサーの肘のあたりをトントンと小突いた。電話をしながら、おじさんの方を向く男性、そして…

「ちょっと、あんた、さっきからうるさいんだよ」

おじさんが繰り出したのはドス…ではなく、ドスが効いた一言だった。そしてアラサーは「あ、すみません」とだけ言って、また窓の方を見た。



普段、電車の中ではなるべくスマホを見ないと決めている僕は、この成り行きをずっと見ていた。そしてアラサーに注意した後のおじさんと目が合った。僕がぜんぶ見ていたんだろうと察したおじさんの瞳の奥は、

微かに戸惑い、怯えていた

昨今の微妙なモラルの中で、おそらくアラサーに注意することにも躊躇う気持ちがあったのだろう。その姿を見ていた僕から「変な人だ」と思われたくないという気持ちもあったはずだ。それはコワモテであるがゆえに何をするにも自分が加害者側だと思われてしまいがちという、

ナチュラルボーン悪者顔

な人間ゆえのピュアな感情が表れた目だった。

ここでたまたま出逢っただけの彼に向かって実際に声をかけるのは難しかったが、ただ僕はその怯えを湛える目に対してこう伝えたかった。

あんた、ド正論言ってるよ

と。あんたは間違っていないし、人は見た目じゃないって俺は分かっている。

ちなみに、アラサーはおじさんに謝った後も声のボリュームを小さくして通話を続けていた。どれだけ大事な相手かはわからないが、周りに注意されたら一旦電話を切るのが一般的な神経だと思う。それでも自分よがりが勝るというのが昨今の世の中なのかもしれない。西日暮里でアラサーは降りていったが、単なる偶然か、おじさんも西日暮里で降りていった。その後の二人の行方を僕は知らないし、今では知る方法もない。

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鈴木 翔

静岡県生まれ。東京都中央区在住。出版社や編プロに務めた後に独立。旅好きでこれまでに取材含めて40カ国以上に渡航歴あり。国際問題からサブカルまで幅広く守備範囲にしています。現在は雑誌、実用書などの紙媒体での編集・執筆だけでなく、WEBライターとしても様々な媒体に関わっています。ジャンルは、旅、交通、おでかけ、エンタメ、芸術、ビジネス、経済などノンジャンルでありオールジャンル。これまでの経験から「わかりにくいものでもわかりやすく」伝えることがモットーです。

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