空港の待合スペースで見た家族模様。親子関係も悲喜こもごも

引きちぎられたタグ…

家族が固まって動く空港という場所

空港のような極めてシステマティックだけど訪れる人がプライベートかつマナーが曖昧な場所は人間の本性が出やすい。

急いだところで出航時刻は変わらないのに我先にと人を押しのけて前に出ようとする人、転がしているキャリーバッグを誰かにぶつけても知らん顔で行ってしまう人、スマホ歩きで列の進行を乱す人、他人のことなど知ったことか…という行動に出くわすことは多いし、僕自身も無意識にそういうことをしているかもしれない。



これが家族単位だと、また違う表層が見られたりする。空港のようにオープンな空間で家族が離れず動く場所って案外少ないんじゃないだろうか。普段の仲の良さがどうであれ、はぐれぬように固まって動く。

大半は幸せな風景だが、家族という極めてプライベートな関係のコミュニケーションを家の外の衆人監視の場に持ち込むのだから、時として普段なら社会では出さないであろう、その人の“裏の顔”が見えたりする。

例えば最近も往きの便を待つ空港の待合スペースでこんなことがあった。

もしかして“毒親”ですか?

ベンチに腰掛けていたら、なんか後ろ側の席が騒がしい。母親が3歳児くらいの女の子をブチブチと責めている。その声は否でも応でもこちらに聞こえてくるのだが、どうやら時間潰しに“すうじのおけいこ”をやっているようだ。

「そうじゃないでしょ、こっちでしょう」

「違うでしょ、違うでしょ」

「もう、なんど言ったらわかるの?」

文字に起こすと単純でありがちな言葉に見えるが、とにかく叱りつける語気が強い。語弊を招く可能性ありきで言うが、公共の場で親が過剰に我が子を責める場面は周りで嫌でも耳に入る側にも心地よいものではない。

ところが、それで収まるなら、おけいこレベルでも間違うことが許せない完全無欠のヒステリックマザーのもとに生まれた子の“親ガチャ失敗”をかわいそうに思うしかないのだが、このブチブチが買い物なのかトイレなのか、どこかに行っていたパパが戻ってきた途端にピタッと止まるのだ。そして彼が再び離れたら、またブチブチと始まる。

親子にはその親子なりのコミュニケーションの取り方がある。…と、子どものいない僕が子育てを解ったつもりに話しても、まず説得力が無いことはないというのは自ら認めるところだ。ただ、パパがいるかいないかで母親の表裏がこうも違うと、普段から大丈夫なんだろうかと他人中の他人ながら不安になる。

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もう反抗期という歳でもあるまいに

一方で、帰りの便の待合スペースでもこんな場面に遭遇した。

前に座っている男子。男子といっても反抗期はとうに過ぎたであろう大学生くらいの男子である。ちょっとルーズな今風ファッションで耳にはワイヤレスイヤホンをつけている。

すると、ブランドファッションに身を包んだ小綺麗な女性が彼のそばにやってきた。マスクをしているから顔がしっかり見えないが、距離感から量るに家族だろうし、姉ではなく母親だろう。

母親が重量検査済みの息子のバッグを渡すと、何が気に触れたのか知らないが、彼が「は? やめろ、触んな」という感じで母親の手を突っぱねた。親が子どもを叱るのも耐えられないが、その逆みたいのも心がざわつく。



そして事もあろうか、重量検査済みの証明であるタグをぶっちぎってしまう。「それが無いと飛行機に乗れないんだよ」と母親。それを聞いても無言で素知らぬ顔の息子。ついでに僕が見ていても感じる「近くにいるな」という空気を出して母親は遠くに移っていった。

それが。もとより抱いている母親への嫌悪感によるものか、何かしらの症状によるものか。後者であれば申し訳ないが、もう少し親に優しくしておやりよと、彼と同じ一人の“息子”としてヒリヒリとする気持ちになってしまった。

一人旅がメインな僕は家族行動を経験することも少なく、常に一人で静かに慎ましく行動しているわけだが、自分自身そんなことを感じてしまうと、たとえ集団で動くにしてもお行儀の良い行動を心がけたいと思うのである。

【about me…】

鈴木 翔

静岡県生まれ。東京都中央区在住。出版社や編プロに務めた後に独立。旅好きでこれまでに取材含めて40カ国以上に渡航歴あり。国際問題からサブカルまで幅広く守備範囲にしています。現在は雑誌、実用書などの紙媒体での編集・執筆だけでなく、WEBライターとしても様々な媒体に関わっています。ジャンルは、旅、交通、おでかけ、エンタメ、芸術、ビジネス、経済などノンジャンルでありオールジャンル。これまでの経験から「わかりにくいものでもわかりやすく」伝えることがモットーです。

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